米国株について、現在の市場の状況、経済指標、主な上昇要因と懸念材料、そして個別の銘柄やセクターの動向について説明します。
米国株市場の全体的な状況
現在、米国株市場は主要な3指数が史上最高値を更新するなど、非常に強い上昇相場にあります。
ニューヨークダウは史上初めて4万6000ドルを超えて引け、S&P 500とナスダックも過去最高値を記録しています。
小型株指数であるラッセル2000も大幅に上昇しており、市場全体で株高の傾向が見られます。
ヒートマップを見ても、半導体株以外にも幅広いセクターで資金が流入し、ほぼ全面高の状況です。
しかし、市場のセンチメントを示す「恐怖と貪欲指数」は53とニュートラルな状態であり、極端な貪欲状態にはなく、投資家はむしろ悲観的な見方が多いとも指摘されています。市場上昇の主な要因
米国株の上昇を支えている主な要因は以下の通りです。
利下げ期待の高まり
CPI(消費者物価指数)
8月の消費者物価指数(CPI)は、総合指数が前年同月比2.9%上昇(予想通り)、コアCPIは前年同月比3.1%で横ばい(予想通り)となりました。
一部前月比の伸びが予想を上回る項目(総合で0.4%上昇、予想0.3%)もありましたが、市場はこれを「FRBの行動を変えるほどホットではない」と判断し、利下げ期待を後押ししました。
PPI(生産者物価指数)
その前日に発表されたPPI(生産者物価指数)は、前月比で0.1%マイナスとなり、市場予想の0.3%プラスを大きく下回ったことで、インフレの減速を示唆しました。
雇用統計の悪化
新規失業保険申請件数が26.3万件と市場予想(23.5万件)を大幅に上回り、過去の雇用統計も大幅に下方修正されるなど、労働市場の弱さが意識されています。
これにより、FRBが景気減速に対応して利下げを行う必要性が高まったとの見方が広がっています。
FOMCでの利下げの織り込み
市場では、来週のFOMCで0.25%の利下げが行われる確率が90%を超えており、さらに10月と12月にもそれぞれ0.25%の利下げが実施され、年内に合計3回の利下げ(合計0.75%)が行われると高確率で織り込まれています。
歴史的に見ても、利下げサイクルの初期は強気相場が走りやすい時期とされています。
AIブーム
オラクルやソフトバンクグループの急騰に代表されるように、AI関連銘柄が市場を牽引しています。
特にオラクルはAIクラウド契約への期待から急騰し、その創業者であるラリー・エリソンの資産が一日で1000億ドル増加したとの報道もあります。
ドル安
今年に入り、ドルが主要通貨に対して約10%下落しており、これは輸出企業にとって追い風となっています。
企業の関税適応
企業がすでに発表されている関税を織り込み、調達先の交渉やサプライチェーンの調整、価格転嫁などで対応を進めている点も市場にプラスに作用しています。
株式市場の性質
S&P 500指数は歴史的に取引の15%で最高値を更新しており、深刻な経済危機を除けば、長期的に上昇する傾向にあるため、記録的な高値はそこまで特別なことではないという見方も存在します。
市場の懸念材料とリスク
一方で、市場にはいくつかの懸念材料やリスクも指摘されています。
インフレ再燃の可能性
CPIの各項目を見ると、食品価格、ガソリン価格、自動車メンテナンス・修理費、航空運賃、ホテル宿泊費、住居費、などが依然として高水準で推移、あるいは上昇傾向にあります。
エコノミストからは、利下げが開始されればインフレがさらに加速する可能性も指摘されています。
トランプ政権による関税政策の影響が物価に表れ始めている可能性もあります。
労働市場の弱さ
新規失業保険申請件数の増加は、テキサス州での洪水被害による一時的な要因の可能性も指摘されていますが、労働市場全体の弱さを示す兆候として懸念されています。
株式市場の割高感と加熱感
現在の米国株のバリュエーション(PER)は歴史的に割高水準にあり、一部の投資家はこれを「スタグフレーションリスク(インフレと景気悪化の同時進行)を無視している」と警告しています。
オラクルやオープン・ドア・テクノロジーズのように、短期的に株価が急騰する「ミーム株」の動きも市場の加熱感を示すものとして注意が必要です。
長期金利の上昇トレンド
40年間続いた金利の低下サイクルが2021年に終わり、今後20年から40年間は金利が上昇する可能性が指摘されています。
目先の金利動向だけでなく、長期的なトレンドを見据える必要があるとされています。
市場の認識とFRBの判断の乖離
現在の市場はFRBが利下げに踏み切ることを強く織り込んでいますが、一部ではCPIデータは利下げ期待を強めるものではなかったとの意見もあり、FRBが利下げを見送る可能性や、その後の市場の混乱リスクも指摘されています。
サブプライム自動車ローンの問題
自動車のサブプライムローンを提供する企業が破綻した事例があり、サブプライムローン市場の本格的な問題化への懸念も浮上しています。
個別銘柄・セクターの動向
ソフトバンクグループ (SBG)
AI関連への期待から急騰し、信用売り残の買い戻し(ショートカバー)もその一因と見られています。
オラクル (Oracle)
AIクラウド契約への期待から一時的に大きく上昇しましたが、その後に利益確定の売りが出ています。
テスラ (Tesla)
MACDのゴールデンクロスや包み線、強気のトライアングルフォーメーションなどの強気サインが出ており、過去の日中大幅下落後の回復傾向もデータで示されています。
マイクロンテクノロジー (Micron)
DRAM需要の増加やAI関連需要への期待から株価が上昇しています。
アドビ (Adobe)
AIの伸びに支えられて四半期売上が過去最高となり、今後の見通しも上方修正され、株価も上昇しています。
ゴールド (金)
利下げ期待、地政学リスク、安全資産としての需要から、高値圏で推移しています。
天才投資家のレイ・ダリオ氏もポートフォリオに10~15%組み入れるべきと述べています。
投資家の見解と戦略
市場の裏側
デリバティブ市場では、ヘッジファンドが個人の売り残を狙って株価を吊り上げる「ゼロサムゲーム」が行われているという指摘もあります。
多様な投資戦略
インデックス投資だけでなく、短期・中期投資やリスク管理を重視する視点も提示されています。
NISAでのFANG+投資
FANG+への積立投資が長期的に大きなリターンをもたらす可能性も示唆されています。
個別株の注目
ソフトバンクグループ、パランティア、アドバンテスト、東京エレクトロンなどの銘柄が注目されています。
現在の米国株市場は、利下げ期待とAIブームに支えられた力強い上昇トレンドにありますが、インフレ再燃リスク、労働市場の軟化、市場の割高感といった潜在的な懸念も存在しています。
投資家は、これらの表と裏の情報を総合的に判断し、慎重な姿勢で市場に臨むことが求められます。


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