村上譲顕氏の著書によるこの本は、現代日本人の健康問題の多くが「塩分不足」に起因しているという、一般的な常識とは異なる視点から健康を捉え直す内容です。
本の核心テーマと村上譲顕氏の主張
この本の最も重要なメッセージは、現代の日本人は厚生労働省などが推奨する減塩基準に過剰に縛られ、結果として深刻な塩分(ナトリウム)不足に陥っているという点です。
そして、この塩分不足が、単に血圧の問題に留まらず、うつ病、アレルギー、自己免疫疾患、がん、認知症など、多岐にわたる現代病の根本原因となっていると村上氏は警鐘を鳴らしています。
村上氏は、長年の臨床経験と研究に基づき、塩は単なる味付けの調味料ではなく、生命活動に不可欠な「ミネラル」の供給源であり、特にナトリウムとカリウムのバランスが心身の健康を大きく左右すると主張しています。
減塩信仰への疑問と歴史的背景
「塩=悪」の誤解の是正
現代社会では「塩は高血圧の原因」「塩は体に悪い」という認識が広く浸透していますが、村上氏はこの常識を真っ向から否定します。
そもそも、高血圧の原因は塩分摂取過多だけではなく、むしろカリウムとのバランス、ストレス、運動不足、食品添加物など多岐にわたると指摘しています。
「日本人は塩分を摂りすぎている」という神話の否定
日本の伝統的な食文化、特に発酵食品(味噌、醤油など)には多くの塩分が含まれていましたが、昔の日本人が特別に不健康だったわけではありません。
むしろ、現代に比べて生活習慣病が少なかったとも言えます。村上氏は、この矛盾を「現代の食生活と塩の質の変化」という観点から説明します。
減塩推進の背景
減塩が声高に叫ばれるようになった背景には、食品加工業界の進化や、それに伴う「精製された食塩」の普及があることを示唆しています。
ミネラルが除去された純粋な塩化ナトリウムは、体への負担が大きいと指摘しています。
塩の役割とミネラルバランスの重要性
体液の浸透圧調整
塩(ナトリウム)は、細胞内外の浸透圧を維持し、体液のバランスを保つ上で不可欠です。
これが崩れると、細胞機能に異常が生じ、全身の不調につながります。
神経伝達と筋肉収縮
ナトリウムとカリウムは、神経細胞における電気信号の伝達や、筋肉の収縮に直接関与しています。
これらのミネラルが不足すると、神経系の機能不全や筋肉の痙攣、疲労感などが現れます。
酵素の活性化
体内で働く様々な酵素の活性化には、多くのミネラルが必要です。
塩は単一のミネラルではなく、微量ミネラルを豊富に含む良質な天然塩であれば、多岐にわたる酵素反応をサポートします。
胃酸の生成
胃酸の主成分である塩酸は、塩化ナトリウムから生成されます。
塩分不足は胃酸分泌を低下させ、消化不良や栄養吸収の阻害、さらには免疫力の低下にもつながると考えられます。
副腎機能とストレス応答
塩分は、副腎の機能をサポートし、ストレスホルモンの調整にも関与します。
塩分不足は副腎疲労を引き起こし、倦怠感、集中力の低下、うつ症状などを招く可能性があります。
排毒作用
塩分は、体内の老廃物や毒素の排出を促す作用も持っています。
塩分不足が引き起こす具体的な症状と疾患
村上氏は、以下のような症状や疾患が塩分不足と深く関連していると指摘しています。
精神・神経症状
うつ病、パニック障害、不眠、集中力の低下、倦怠感、めまい、頭痛、不安感。
消化器系の不調
胃もたれ、便秘、下痢、食欲不振、逆流性食道炎。
アレルギー・自己免疫疾患
アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息、リウマチ、甲状腺疾患。
代謝系の問題
低血糖、糖尿病、肥満。
循環器系の問題
低血圧、不整脈、冷え性。(高血圧の一部も、塩分不足によるカリウム過剰摂取や腎臓への負担などが原因の場合があるとも指摘)
がん
細胞のミネラルバランスの乱れが、がん細胞の増殖に影響を与える可能性を指摘。
子供の発達障害・問題行動
ミネラルバランスの乱れが、脳機能の発達や情緒の安定に影響を与える可能性。
「良い塩」と「悪い塩」の見極め方
村上氏は、塩ならば何でも良いというわけではないと強調し、ミネラルバランスの取れた「良い塩」の選択が非常に重要であると説いています。
良い塩
海水から作られた天然塩、岩塩など、ナトリウム以外のミネラル(マグネシウム、カリウム、カルシウムなど)を豊富に含み、精製されていない塩。
これらは「にがり」成分を適度に含んでいることが特徴です。
悪い塩
工業的に精製され、塩化ナトリウム以外のミネラルがほとんど除去されてしまった「食卓塩」など。
これらは体にとって負担が大きく、ミネラルバランスを崩しやすいとされています。
具体的な塩分補給と食生活の提案
天然塩を積極的に摂取する
調理には精製塩ではなく、ミネラル豊富な天然塩を使用することを推奨。
味噌汁の活用
伝統的な味噌汁は、天然塩と発酵食品、具材の組み合わせで、理想的なミネラル補給源となる。
梅干しや漬物
これらも天然塩と発酵食品の組み合わせで、ミネラル補給に役立つ。
喉が渇いたら塩分も
夏場の熱中症対策だけでなく、日常的に適度な塩分補給を意識する。
水分補給の際には、少量の天然塩を溶かすのも良い方法。
「塩分を摂りすぎた」という意識を変える
血圧を気にして塩分を控えるのではなく、体の声を聞き、体が求める量の塩分を摂ることを提案。
カリウムとのバランス
塩分と同時に、カリウムも過剰摂取にならないよう注意が必要。
特に、野菜や果物ばかりを大量に摂りすぎると、相対的な塩分不足を招くこともあると指摘しています。
まとめと本書の意義
村上譲顕氏の「日本人には塩が足りない!」は、従来の健康常識に一石を投じる内容であり、現代人の健康問題を多角的に捉え直すきっかけを与えてくれる一冊です。
この本は、以下のような点で意義深いと言えます。
減塩信仰への批判的視点
漫然と「減塩」を推進する現在の医療・栄養指導に疑問を呈し、個々の体の状態や塩の質を考慮することの重要性を訴えています。
ミネラルバランスの重要性の再認識
塩分が単なるナトリウムだけでなく、多様なミネラルの供給源であることを強調し、ミネラルバランスが心身の健康に不可欠であることを力説しています。
ホリスティックな健康観
塩分不足が精神疾患から免疫疾患、がんまで、幅広い疾患に影響を与えるという視点は、部分的な治療ではなく、体全体のバランスを整えることの重要性を示唆しています。
食の選択の重要性
「良い塩」を選ぶことの重要性を明確にし、消費者に対し、食品の成分表示や産地、製法に関心を持つことを促しています。
ただし、注意点として、本書の内容は一般的な医療機関が推奨する基準とは異なる部分もあるため、持病がある方や治療中の方は、医師と相談しながら健康法を実践することが大切です。


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