山浦一保氏の著書『武器としての組織心理学――人を動かすビジネスパーソン必須の心理学』
本書の概要
立命館大学の山浦一保教授による本書は、企業やスポーツ組織の現場調査で得られた知見と、心理学・脳科学・集団力学に基づく理論をもとに、現代のリーダーが直面する「組織内に潜むネガティブ心理」をどう乗り越え、活かすかを解説しています 。
妬みを中和し、モチベーションを引き出せ
「妬み」には悪性と良性があり、後者は「他者を羨み、自分も高めたい」という前向きな刺激になりうる 。
妬まれた側は「隠す・避ける・手を組む」などの戦略的行動をとりうる 。
“チームの温度差”を埋めよ
メンバー間に生じる温度差(意欲や情報認識のズレ)を放置すると、成果や風土にひずみが生まれる 。
解決には、挨拶や個別声かけ、情報共有、共通ビジョンの浸透などを通じてベクトルを合わせることが有効 。
隠れた不満を見つけ、有益化せよ
不満は期待と現実のズレから生まれ、リーダーが察知すれば変化のきっかけにできる 。
本書は、不満をパフォーマンスに変える「環境戦略(評価・役割・心理的安全性・志向の合わせ)」と「コミュニケーション戦略」を提示しています 。
権力と賢く付き合え
権力は人を変える。
特にリーダーは「保身」ではなく意識的に行動の起点を捉える必要がある 。
また、部下から上司への「影響戦略」を9タイプに分類し、その傾向から信頼関係を推し量る方法を紹介 。
失った信用を取り戻せ
信頼は一瞬で崩れるが、適切な謝罪や相談による関係修復が可能 。
著者は謝罪に成功する6つの要素を挙げ、組織の風土再建につなげています 。
組織心理学を使う「武器」とは
本書では、組織心理学を「防具」として自分を守るだけでなく、「武器」として人を動かすための戦略を提供する旨が強調されています 。
ネガティブな感情や関係が避けがたいからこそ、心理学的視点からその対処法を体系化している点が特徴です 。
リーダーができること
リーダーは、組織内で生じるネガティブな感情や関係性に対して、受け身ではなく、積極的に働きかける姿勢が求められます。
特に重要なのは、妬み、温度差、不満、権力、信頼といった要素に対して、心理学的な視点から戦略的に対応することです。
妬みの対処
妬みに対しては、部下の成果を過度に目立たせず、他者との協働の中で評価するなど、妬まれにくい環境づくりが有効です。
また、妬みを悪と見なすのではなく、「自分も成長したい」という前向きなエネルギーに変換するような声かけや関わり方が求められます。
温度差の解消
メンバー間に存在する「温度差」への対応としては、日常の挨拶や雑談といった小さなコミュニケーションを重ねることで、心理的な距離を縮めることが重要です。
さらに、チーム内で共通の目標や価値観を確認しあい、認識のズレを埋める努力が必要です。
不満の活用
また、不満を抑え込むのではなく、その背景にある「期待」を理解することが大切です。
リーダーは、不満の声に耳を傾け、評価や役割の調整を行い、個々の能力を活かす環境を整えることで、不満を成長のエネルギーに変えることができます。
権力の健全活用
権力に関しては、リーダー自身がその影響力を自覚し、無意識に人を押さえつけたり、自分を守る行動に走ったりしないように注意する必要があります。
さらに、部下がどのような方法で上司に働きかけようとしているのか(理詰め、感情、相談など)を見極め、個々に応じた柔軟な対応を心がけることが信頼構築に繋がります。
信頼の修復
信頼の修復については、失敗や誤解が生じた際に、早期に謝罪し、説明責任を果たすことが基本です。
そのうえで、行動の一貫性や誠実な対応を積み重ねることで、再び信頼を築いていくことが可能になります。
以上のように、リーダーには、人の感情や関係の「見えない力学」を理解し、それを組織を前進させるエネルギーに転換する役割が期待されます。
心理学を武器として使うとは、まさにそのための視点とスキルを持つということです。


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