鈴木祐さんの著書『最高の体調』は、現代人が抱える様々な体調不良が「文明病」という一つの根本原因から来ていると指摘し、その解決策を科学的根拠に基づいて解説しています。
この本は、日々の疲れ、集中力の低下、うつ病、肥満、不眠といった多様な不調を個別の問題として捉えるのではなく、人類の進化と現代社会の間に生じたミスマッチが原因であると説明しています。
文明病
文明病とは、人類が約250万年もの間、狩猟採集生活を送る中で最適化されてきた体と脳のシステムが、農耕が始まって約1万年、産業革命以降のわずか250年で急激に変化した現代社会の環境に適応しきれていないことによって引き起こされる症状のことです。
このミスマッチは、現代社会の「多すぎる(カロリー、ストレス、情報など)」、「少なすぎる(睡眠、運動、自然との触れ合いなど)」、そして「新しすぎる(加工食品、デジタルデバイス、孤独など)」という3つの視点から理解できます。
本書では、文明病の主な原因を「炎症」と「不安」の二つに集約して解説しています。
炎症
炎症は、細胞レベルで発生する「火事」のようなもので、体がダメージを受けた際に免疫システムが修復しようとする防御反応です。
短期的な炎症は必要不可欠ですが、現代人の多くは体内でも慢性的な炎症がくすぶり続けており、これがうつ病、肥満、糖尿病、動脈硬化、脳梗塞、認知症など、さまざまな不調や病気の原因となると考えられています。
特に、内臓脂肪の増加は体内で異物と認識され、免疫システムを常に活性化させ、慢性炎症を引き起こす一因となります。
炎症を抑えるための主な対策
腸内環境を整える
プロバイオティクスやプレバイオティクスを含む発酵食品(ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌など)や食物繊維が豊富な食品(野菜、果物、海藻、キノコ類、ゴボウ、リンゴ、オクラなど)を積極的に摂取することが推奨されます。
一方で、抗生物質の過度な使用は腸内細菌のバランスを崩し、善玉菌を死滅させる可能性があるため、注意が必要です。
適度な運動
短時間で効率的な高強度インターバルトレーニング(HIIT)や、週に2回45分程度の少しきつい運動、または週に2〜3回30分程度のウォーキングなどが効果的です。
自然との接触
定期的に公園に行く(週に1回30分以上、または1ヶ月に150分以上)、日光を浴びる(1日10〜20分)、観葉植物を置く、自然の画像や音声を活用するなどが推奨されており、副交感神経を活性化させ、ストレス軽減や疲労回復につながります。
質の良い睡眠
7〜9時間の睡眠を確保し、就寝前のブルーライトを避ける、部屋を暗く静かにする、15〜20分程度の昼寝を取り入れることなども有効です 。
日中の太陽光浴も夜の良質な睡眠に繋がります。
ストレス管理
瞑想や深呼吸、ストレスをポジティブな感情に変換する「リアプレイザル」などのリラクゼーションテクニックを取り入れることが推奨されています。
過度なストレスは慢性炎症を引き起こし、心臓病などの健康問題の原因となります。
良好な人間関係
親密な友人を5人程度持つことが推奨されており、良好な人間関係はダイエットや禁煙よりも健康効果が高いとされています。
孤独は体と脳に悪影響を及ぼし、炎症を引き起こす可能性があります。
デジタル断食
スマートフォンやパソコンの使用時間を減らすことが推奨されています。
特に寝る前や食事中、運動中はスマホの使用を避けるべきです。
スマホからの強い刺激は脳を興奮状態にし、休息を妨げ、ストレスを溜めると言われています。
栄養バランス
加工度の低い自然な食品を中心に、多様な栄養素を摂取することが重要です。
ビタミンDやオメガ3脂肪酸など、現代人に不足しがちな栄養素を意識的に摂取することも大切です。
トランス脂肪酸や過剰な砂糖・塩分の摂取は控えるべきです。
不安
現代の不安は、昔の人が感じていたような命の危険に直結する「はっきりとした、短期間で解決する不安」とは異なり、将来の仕事、お金、人間関係、SNSでの評価など、「ぼんやりとした、長期化する不安」が特徴です。
このぼんやりとした不安は、私たちの記憶力や判断力を低下させ、心身のパフォーマンスを損ない、寿命を縮めることにも繋がりかねません。
これは、人類が進化の過程で未来について深く考える概念を持たなかったのに対し、現代人は常に未来を憂慮してしまうことによるミスマッチであると説明されています。
不安を取り除くための主な対策
価値観を明確にする
人生において自分が何を大切にしたいのかをはっきりさせることで、未来に対するぼんやりとした不安を減らし、今ここに集中できるようになります。
マインドフルネス・瞑想
過去や未来にとらわれず、「今、ここ」に意識を集中する練習です。
瞑想だけでなく、日常の掃除や皿洗い、散歩といった行動に意識を向けるだけでもマインドフルネスの効果が得られます。
畏敬の念を抱く
自然、芸術、歴史上の偉人など、自分の理解を超えるような崇高なものに触れることで、心理的な不安や体内の炎症レベルが低下すると言われています。
遊びを取り入れる・ルール化
仕事や勉強、育児などにおいても楽しさやユーモアを持って解釈する「遊び心」は、幸福感を高め、ストレスに対処する効果があります。
目標を細分化し、毎日やるべきことを3つ書き出す「3つのルール」など、ゲーム感覚でタスクに取り組む方法も紹介されています。
また、「もし〜が起きたら、〜をする」というif-thenプランニングも習慣化を進め、不安を軽減するのに役立ちます。
これらの対策は、急激な変化ではなく、小さなことからでも継続することが重要であると強調されています。
遺伝子に合った生活を取り戻すことで、最高の体調を実現できると本書は説いています。


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