自己効力感とアルバート・バンデューラ氏

自己啓発

自己効力感(Self-efficacy、セルフエフィカシー)について、提唱者であるアルバート・バンデューラ氏が提唱した理論を中心に、詳しく解説します。

自己効力感は、国家資格キャリアコンサルタント試験においても出題実績があり、キャリア理論を理解する上で非常に重要な概念です。

自己効力感の定義と概念

自己効力感は、心理学者のアルバート・バンデューラによって提唱された概念です。

これは、人が何か行動を起こす際、自分にはその行動をちゃんとやり遂げる能力があるんだと信じられるかどうかという「効力期待」に近い感覚を指します。

より具体的に、ソースでは以下のような定義がされています。

課題への対峙の確信

何らかの課題に直面した際に、きちんとしたその課題に対峙できる、そういった確信のことを指します。

行動に対する自信と信念

自分がある行動について「しっかりやれます」という自信のことです。

また、その行動をした時に自分自身でちゃんとその行動をコントロールできているという信念、あるいは自分が周囲からの期待や要請にちゃんと応えられているという確信を総じて自己効力感と呼ぶことがあります。

未来の行動可能性への予測

目標を達成するための能力を自分自身が持っていると感じる予測であり、「きっと私にもできる」と思える感覚。

望ましい効果を産み出すことへの信頼

自分の行為によって望ましい効果を生み出すことができると信じる気持ちです。

バンデューラは、人が行動を決定する際には、良い結果になるだろうという「結果期待」だけでなく、そもそもその行動をやり遂げる能力が自分にあるかという「効力期待(自己効力感)」が重要であると考えました。

自己効力感の重要性と影響

自己効力感は、個人の行動や精神衛生に大きな影響を与えます。

自己効力感が低い場合の影響

自己効力感が低いと、以下のようなネガティブな影響が現れます。

新しい挑戦に対して消極的になったり、すぐに諦めてしまったりします。

自分の能力を過小評価し、物事の困難さを実際より以上に過大視する傾向があります。

自ら選択肢を手放してしまうという非常にもったいない状況につながります。

例えば、パイロットに憧れていても、訓練をやり遂げられる自信がなければ諦めてしまいます。

生きることに不安やいらだちを募らせ、やがて失望、落胆、努力の放棄、無気力、抑うつ状態、社会逃避に陥る可能性が高くなります。

自己効力感が高い場合の影響

一方、自己効力感が高いと、以下のようなポジティブな影響があります。

挑戦へのハードルが下がり、行動的になります。

失敗をしてもめげずに、それを次の成功の糧にするという特徴があります。

自身が求める目標と、現在までに成し遂げてきたことの間にギャップが生じた際、より一層努力しようという動機づけが高まります。

精神の健康や肉体の健康にも良い影響を与え、抑うつ感が減ったり、充実感や幸福感が増したりします。

また、キャリアの文脈においては、人は自己効力感が高い分野や職業を選択する傾向があります。

自己肯定感との違い

自己効力感はしばしば自己肯定感と混同されますが、両者は異なる概念です。

自己肯定感

ありのままの自分を認めるという感覚であり、結果にあまり左右されない自分の存在そのものへの肯定感を指します。

例として、試験に落ちてもそれで自分の価値が全部なくなるわけではない、と考えることです。

自己効力感

特定の目標達成に向けた未来の行動可能性を信じる力であり、行動や未来に向かっています。

自己効力感を高める4つの要素

バンデューラは、自己効力感を高めるために影響を与える要因として、主に以下の4つを挙げています。

これらは生まれつきの才能ではなく、後から経験を通して意識的に育てていけるものとされています。

成功体験 (直接的達成体験)

これは最も自己効力感の形成に強い影響を及ぼすと言われている方法です。

定義

自分の力でやり遂げたという経験です。

実践

過去に目標達成した経験や、困難を乗り越えた経験を思い出したり、書き留めてみたりすることが重要です。

ポイント

大きな成功でなくても、スモールステップをしっかり作り、コツコツと小さな成功体験を積み重ねていくことが推奨されています。

代理経験

これは、他人を観察してその行動や結果から学ぶというバンデューラの社会的認知理論(または社会的学習理論)の中核の一つです。

定義

自分と同じ能力レベルの人間や、自分と似たような立場の他者(モデル)が努力して成功しているのを見聞きすることです。

効果

他者の成功を見ることで、「あの人にできるのであれば、自分も同様にやれそうだ」と感じ、自信をつけることができます。

ポイント

身近にロールモデルがいなくても、テレビドラマ、YouTube、SNS、映画、本などから憧れの対象を見つけて参考にすることも有効です。

言語的説得

他者からの言葉によるサポートです。

定義

ある行動に対して、他者から繰り返し褒められたり、励まされたりすることで、その行動についての自己効力感が高まります。

効果

特に、自分を信頼してくれている人、尊敬する人、大切な人から「あなたならできる」と言ってもらうと効果は倍増します。

ポイント

単に褒められるだけでなく、その励ましをきっかけに行動を起こし、その行動の達成が伴うことで自己効力感は向上します。

情動的喚起(生理的喚起/冗長的な安定)

心身の状態を整えることで自己効力感を高めます。

定義

身体や心の中で起きた生理的・感情的な変化を体験することによって形成される自己効力感です。

効果

リラックスして落ち着いていると自己効力感は向上しますが、人前で話すときに動悸や冷や汗をかき恥ずかしさを感じるなど、ネガティブな経験をすると自己効力感は低下します。

実践

ストレスフルな状況下では自信を保つのが難しいため、深呼吸をするなど、意図的・計画的にリラックスした状態を自ら作り出す工夫や努力が非常に重要です。

自己効力感と関連する理論

社会的学習理論と三者相互作用

バンデューラは、人が他者から影響を受けながら習慣や行動、価値観などを学ぶ「社会的学習理論」を提唱しました。

この理論の中で、自己効力感は特に重視される概念です。

また、バンデューラは、キャリア選択や行動が、従来の「人」と「環境」の相互作用だけでなく、「行動」を加えた「人」「環境」「行動」の三者相互作用によって決定されるという考えを提唱しました。

社会認知キャリア理論 (SCCT)

バンデューラの社会的学習理論を基礎とし、レント、ブラウン、ハケットといった学者たちが、自己効力感、結果期待、目標設定といった概念を加えて発展させたのが、社会認知キャリア理論(SCCT: Social Cognitive Career Theory)です。

このSCCTは、自己効力感をキャリア選択の重要な要因として位置づけています。

まとめ

自己効力感とは、自分がある行動を成功させられるという確信や信念のことを指します。

これは実際の能力そのものではなく、「できる」という感覚であり、挑戦する意欲や困難を乗り越える力に強く影響します。

アルバート・バンデューラはカナダ生まれの心理学者で、社会的学習理論を提唱した人物です

。彼は人の行動が観察や模倣によって学習されることを示し、その中で「自己効力感」という概念を導入しました。

バンデューラは、成功体験、他者の行動観察、励まし、感情状態の4つが自己効力感を高める重要な要因であると述べ、人の成長やモチベーション理解に大きな影響を与えました。

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