言葉にする習慣

自己啓発

さわらぎ寛子さん著書『言葉にする習慣』を参考にしました。

「うまく言葉にできない」の“うまく”とは何か

多くの人が「うまく言葉にできない」と感じるとき、その「うまく」とは「正解のような言葉を出すこと」「人に伝わる完璧な表現を選ぶこと」を指しています。

しかし、著者は「うまく」とはそういう意味ではないと言います。

言葉をうまく扱うとは、誰かに評価される正しい言葉を選ぶことではなく、「自分の本音を誤魔化さず、そのまま表に出すこと」です。

つまり、「うまく言葉にする」というのは、上手な表現技術ではなく、「自分の心に正直である」という姿勢のこと。

たとえ言葉がつたなくても、感情の核がこもっていれば、それは立派に“うまく”言葉にできているのです。

大切なのは「他人に伝わるか」ではなく、「自分が何を感じているのかを、自分自身に伝えられるか」なのです。

頭の中にある言葉を体から出す

頭の中で考えていることは、形がありません。思考の中にとどめたままでは、いつまでも堂々巡りになります。

「言葉にする」とは、その無形の思考を体の外へ出すこと。つまり、声に出す・文字にする・身振りで伝えるなど、体を使って表現する行為です。

体を通して出すことで、思考は現実化し、初めて「自分の外側で見ること」ができます。

たとえば、ノートに書いてみると、曖昧だった感情が整理され、心の中が静かになります。

声に出して話すと、自分の言葉が耳から入り、冷静に自分を客観視できます。

頭の中にある言葉を体の外に出すことは、感情を解放し、思考を整える「出すケア」でもあります。

自分の感覚や感情を観察する

言葉にする前に大切なのは、「今、自分が何を感じているか」を丁寧に観察することです。

多くの人は、感じるよりも先に「考える」癖がついており、感情を無視したまま言葉を探そうとします。

しかし、言葉の元になるのは「感覚」や「感情」です。

悲しい、寂しい、嬉しい、モヤモヤする—それらの小さな変化を感じ取る力を育てることで、自然と正確な言葉が出てくるようになります。

観察とは、ジャッジしないことでもあります。

「こんなこと感じたらダメ」と否定せず、「私は今、こう感じているんだな」と静かに見つめることが大切です。

感情を感じることを恐れず、素直に受け入れる。その積み重ねが「自分の言葉を持つ」第一歩となります。

頭の上の吹き出しを想像する

著者は、頭の中に思い浮かぶ言葉を「吹き出し」として視覚化することをすすめています。

たとえば、漫画の登場人物のように、自分の頭の上に吹き出しがあって、そこに「今、何を考えているか」「どんな言葉が浮かんでいるか」を書き出すイメージです。

この方法は、自分の思考を客観的に見る訓練になります。

自分の中だけでモヤモヤしている言葉を、吹き出しの外に出して眺めると、感情の整理がつきやすくなります。

「この吹き出しには愚痴が多いな」「今は焦っているな」と気づけば、そこから距離をとることもできるようになります。

思考を客観化し、自分を俯瞰するための簡単な心のトレーニング法です。

心のつぶやきをすべて口に出してみる

心の中で「本当はこう言いたい」「でも言っても意味ない」と抑え込んでいる言葉を、まずは小さな声でもいいので口に出してみること。

これは、自分の内側に閉じ込めていた思考や感情を、現実の世界に一歩踏み出させる行為です。

もちろん、誰かに直接ぶつける必要はありません。

独り言でも、メモでもかまいません。

声に出すことで、自分の気持ちを自分の耳で聞き、思考が整理されていきます。

心のつぶやきを言葉にすることは、「自分と会話すること」です。

抑えていた感情を出すことで心が軽くなり、言葉に対する恐れや緊張も減っていきます。

やがて、自分の本音を自然に話せるようになり、他者との関係にも安心感が生まれます。

思いをたどる日記をつける

「思いをたどる日記」とは、その日の出来事を単に記録するのではなく、「自分がなぜそう感じたのか」「何を考えていたのか」という“思いの流れ”を言葉で追いかける日記です。

たとえば、「今日上司の一言でイライラした」という出来事をきっかけに、「なぜ自分は腹が立ったのか」「本当は何を求めていたのか」と、気持ちの根っこを掘り下げて書いていきます。

この作業を続けると、感情のパターンや思考の癖が見えてきます。

「いつも同じことで不安になる」「本当は認めてほしかっただけだ」など、無意識の心の動きを言葉にできるようになります。

思いをたどる日記は、単なる記録ではなく、自分の心を観察し、理解し、整えるための“言葉のトレーニング”です。

書くことによって、心の中のもやもやを見える化し、次第に思考が整理されていくのです。

あなたが意見を言えない理由

多くの人が「自分の意見を言えない」と感じるのは、単に表現力が足りないからではありません。

その根本には、「間違えたくない」「嫌われたくない」「自分の考えに自信がない」といった心理的なブレーキがあります。

著者は、それを「自分の言葉に責任を持つことへの怖さ」と指摘します。

しかし、意見を言うとは他人を否定することではなく、「私はこう思う」という自分の立場を表明することにすぎません。

正解かどうかではなく、「私はこう感じている」「私はこう見ている」と伝えることが大切です。

意見を言えない人は、頭の中で他人の反応を先回りして考えてしまい、自分の言葉を押し殺してしまいます。

だからこそ、まずは「意見とは、自分の感情や価値観を表すもの」と理解し、完璧でなくても声に出してみることが第一歩です。

小さなことでも言葉にすることで、自分の考えが形になり、やがて自信へと変わっていきます。

それっぽいことを疑う

「それっぽいこと」とは、聞こえのいい言葉や、一般的に正しそうに見える考え方のことを指します。

たとえば、「努力すれば報われる」「みんな同じように頑張っている」「ポジティブでいよう」といった言葉は一見正しいように思えます。

しかし、著者はこうした“それっぽい言葉”を疑う力が必要だと説きます。

なぜなら、それっぽい言葉に頼ると、自分の本当の気持ちが見えなくなるからです。

「本当に私はそう思っているのか?」「この言葉は今の自分に合っているのか?」と問い直すことが、言葉の本質を磨くことにつながります。

言葉に“自分の体温”があるかどうか、それを感じ取ることが大切です。

他人の言葉ではなく、自分の実感を基準に言葉を選ぶこと。

それが「自分の言葉で生きる」ための核心です。

多面的な視点を身につけるには?

言葉に深みを持たせるためには、物事を一方向からだけでなく、多面的に見る力が欠かせません。

多面的な視点とは、「正しい」「間違っている」という二元的な判断ではなく、「相手の立場ならどう見えるか」「別の状況ならどう感じるか」と、異なる角度から眺める姿勢です。

著者はこの力を養う方法として、「他人の言葉を一度そのまま受け止める」ことをすすめています。

反論したくなっても、まず「なるほど、そういう考え方もあるんだ」と一度受け入れる。

そのうえで、自分の視点との違いを比較し、両方を並べて考えてみる。

これを繰り返すと、思考の柔軟性が生まれ、自分の言葉にも深みが加わります。

多面的な視点を持つことは、他人を理解することでもあり、同時に「自分の言葉をより正確に磨くこと」でもあるのです。

言語化は片付けと同じ

言語化とは、心の中の散らかった思考や感情を整理する行為です。

たくさんの感情や考えが頭の中で混ざり合い、「なぜかモヤモヤする」「何から話せばいいかわからない」と感じる状態は、まさに部屋が散らかっているのと同じ。

そのままでは、どこに何があるのかも分からず、必要なものに手が届きません。

そこで言葉を使って「これは悲しみ」「これは怒り」「これは期待」と分類していくことで、心の中が整い、スッキリしていきます。

片付けと同じで、最初は時間がかかっても、続けるうちにどこに何があるかがわかるようになります。

自分の感情や思考を言葉で仕分けることで、混乱が減り、冷静な判断ができるようになります。

つまり、言語化とは“心の整理整頓”であり、言葉を使って自分を整える習慣なのです。

概念ではなくエピソード・行動を伝える

人に何かを伝えるとき、抽象的な言葉ばかりでは、相手に伝わりにくくなります。

たとえば、「私は人とのつながりを大切にしています」と言っても、それだけでは実感が伝わりません。

しかし、「毎朝、職場の人に必ず“おはよう”と声をかけるようにしています」と具体的な行動で伝えると、相手はその人の姿勢をリアルに感じ取ることができます。

著者は、「概念よりエピソード」「理屈より行動」で語ることが、言葉に説得力を持たせる鍵だと説きます。

エピソードには感情の温度があり、行動にはリアリティがあります。

言葉に体験を乗せることで、聞き手は共感しやすくなり、自分自身の記憶にも残りやすくなります。

抽象語を並べるよりも、「どんな出来事だったのか」「自分はどう感じ、どう動いたのか」を語る。

それが、“心に届く言葉”を生み出す秘訣です。

相手が今、何をいちばん知りたいかを考える

人に伝えるときに大切なのは、「自分が何を言いたいか」よりも、「相手が今、何を知りたいのか」を意識することです。

多くの人は話すとき、自分の伝えたい内容ばかりに集中しがちです。

けれど、相手の関心や状況を無視したまま話しても、言葉は届きません。

相手の立場に立ち、「この人はいま何に困っているのか」「どんな情報を求めているのか」「どんな気持ちで聞いているのか」を想像して言葉を選ぶことが、伝える力を高めます。

これは単なる「気配り」ではなく、コミュニケーションを成立させるための基本的な思考です。

相手の知りたいことを中心に据えると、言葉は自然とシンプルになり、伝えたいことが本質だけに絞られていきます。

結果として、相手にとって「わかりやすく、心に届く」言葉になります。

ピンとくる例えを作る

人に伝えるとき、抽象的な説明ばかりだと、どうしても相手には伝わりづらくなります。

そこで著者が勧めるのが、「ピンとくる例え」を作ることです。

例えとは、相手がすでに知っているイメージに、自分の伝えたいことを重ね合わせる橋渡しのようなものです。

たとえば、「言語化は心の片付けです」と言うと、誰もが“片付け”という日常的な体験を通じて、イメージを理解できます。

良い例えは、相手の理解を一気に深める力を持っています。

ただし、例えは「自分にとってわかりやすい」ものではなく、「相手にとってピンとくる」ものを選ぶことが大切です。

そのためには、相手がどんな経験をしているか、どんな背景を持っているかを観察し、言葉の“翻訳”を意識すること。

例えを磨くということは、相手を思いやる想像力を磨くことでもあります。

うまくいく人は小さなことに気づく人

うまくいく人というのは、大きなチャンスや派手な出来事をつかむ人ではなく、日常の小さな違和感や変化に気づける人です。

たとえば、相手の表情の変化、言葉のトーンの違い、自分の中でふと生まれた感情の揺れ——こうした小さなサインに気づける人は、状況に応じた柔軟な対応ができます。

逆に、うまくいかない人は「これくらい大したことない」と見過ごしてしまい、後から大きな問題に気づくことが多いのです。

著者は、言葉にする力も同じだと説きます。

「小さな気づき」を言葉にする習慣がある人ほど、自分の心の変化や他人の感情に敏感であり、それが豊かな表現力につながります。

小さな気づきの積み重ねこそが、結果的に大きな信頼や成果を生むのです。

日常の中にある「微細な違い」に気づくことが、言葉の精度と人間関係の質を高める鍵になります。

人生の主語を自分にする

「人生の主語を自分にする」とは、何かが起きたときに「誰かが悪い」「環境が悪い」と他人や状況を主語にして語るのではなく、「自分はどう感じたか」「自分はどう行動したいか」という視点で言葉を紡ぐことです。

多くの人は、無意識のうちに他人を主語にして生きています。

「上司がわかってくれない」「社会が厳しい」「家族が反対する」—こうした言葉の使い方をしている限り、自分の人生を他人の手に委ねてしまうことになります。

しかし主語を「私」に変えるだけで、意識は大きく変わります。

「上司がわかってくれない」ではなく、「私は上司にどう伝えるかを考えたい」と言い換える。

すると、自分が動かせる範囲に焦点が当たり、現実を変える力が生まれます。

人生の主語を自分に戻すことは、言葉を通して主体性を取り戻すこと。

つまり、「言葉を選ぶ」という行為自体が、自分の人生を選ぶということなのです。

どんな自分でいるかは自分の言葉で決めていい

人は、周囲の評価や他人の言葉に影響されやすいものです。

「あなたは真面目だね」「向いてないんじゃない?」といった他人の言葉が、いつの間にか自分の自己イメージを形づくってしまいます。

けれど、著者は「自分を定義する言葉は、自分で選んでいい」と伝えています。

どんな自分でいたいか、どんな自分で生きたいかは、他人ではなく自分の言葉で決めるべきものです。

たとえば、「私は不器用だから無理」と言葉にすれば、その通りの現実を自ら作ってしまいます。

逆に、「私は少しずつ成長している」と言葉にすれば、思考と行動はその方向に動きます。

言葉には自己暗示の力があり、言葉の選び方が“自分像”をつくっていくのです。

他人の評価に振り回されず、「私はこうありたい」という自分の言葉で自分を定義すること。

それが、自分らしく生きるための出発点です。

まとめ

『言葉にする習慣』は、自分の感じていることや考えを明確にするために「言葉にする力」を磨くことの大切さを教える本です。

うまく言葉にできないのは才能の問題ではなく、思考と感情の整理の習慣が足りないだけだと説きます。

まず、自分の感情や感覚を丁寧に観察し、頭の中に浮かぶ言葉を体から外へ出すことが大切です。

その際、頭の上に吹き出しがあるようにイメージし、心のつぶやきを口に出してみることで、自分の本音が見えてきます。

さらに、日記を書くことで自分の思いをたどり、なぜそう感じたのかを見つめ直します。

他人に合わせて意見を言えないのではなく、「自分の意見を持つことを怖れている」ことに気づくことも重要です。

また、世の中にある“それっぽい言葉”を疑い、表面的ではなく本質を探る姿勢を持ちます。

多面的な視点を身につけるには、違う立場の人の考えを想像し、自分の枠を広げていくことが効果的です。

言語化は頭の中の「片付け」と同じで、曖昧な思考を整理する行為です。

抽象的な概念よりも、具体的なエピソードや行動で語ると、伝わりやすくなります。

そして、相手が今一番知りたいことを意識し、共感を呼ぶ例えを使うことで、言葉の力はさらに強くなります。

最終的に大切なのは、「人生の主語を自分にする」こと。つまり、他人や環境ではなく「自分はどう感じ、どう生きたいか」を自分の言葉で決めることです。

どんな自分でありたいかを言葉にすることで、自分らしい生き方が形づくられていきます。

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