米国株市場は、ナスダックが2%安となり、S&P 500は1.2%安、ダウは251ポイント下落(0.53%安)となり、全体的に大きな下落に見舞われました。
S&P 500が1%以上下げて引けたのは8月以降3回目であり、これは10月10日以来の大きな下げでした。
この全面安の背景には、複数の要因とネガティブな報道が重なり、ウォール街が「リスクオフ」へと傾いたことが挙げられます。
急落の主な要因と市場の警戒感
高決算銘柄の急落
AI(人工知能)関連株を中心とした勝ち組銘柄が急落し、市場のセンチメントを悪化させました。
特に、データ解析企業のパランティアは、CEOが「ソフトウェア市場最高」の決算と豪語するほど好決算を発表したにもかかわらず、一時マイナス9.44%もの急落となりました。
これは、市場がすでに高い期待を先行して織り込んでいたサインと見られています。
高決算にもかかわらず株価が下落したことは、「パランティアショック」とも呼ばれ、AI関連銘柄の過熱に対する売りを誘発する引き金の一つとなりました。
著名投資家によるショートポジションの開示
「ビッグショート」で知られる著名投資家のマイケル・バーリ氏が、NVIDIAとパランティアに対して大規模な弱気ポジション(プット・コール・オプションのプット、つまり「売り」のポジション)を取っていたことが明らかになりました。
バーリ氏は、オープンAIに関連して株価が実態以上に過熱し、ブームが実態以上に大きく見えている状況に懐疑的な目を向けていたとされています。
ウォール街のCEOによる調整の警告
ウォール街のCEOたち(モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスなど)が、今後1年から2年の間に株価が10%から15%調整する可能性があると指摘し、その調整はむしろ市場にとって「健全な現象」として歓迎すべきであると述べています。
バリュエーション(企業価値評価)の懸念
ゴールドマン・サックスのCEOであるデイビッド・ソロモン氏は、相場が走り続けた後は必ずセンチメントを変え、調整を引き起こす何かがあるだろうと述べています。
AIブームによって株価が押し上げられた結果、S&P 500の予想PERは23倍を超えており、これはドットコム・バブル期以来の水準となっています。
企業業績が非常に良い(S&P 500構成銘柄の85%以上が売上も利益もコンセンサスを上回っている)にもかかわらず、バリュエーションが高いという課題が存在しています。
機関投資家のリスク資産からの逃避
この日は、AI銘柄以外でも、仮想通貨(ビットコイン、イーサリアム)、ミーム株、クルーズラインなど、広範なリスク資産が打撃を受けました。
特に、通常は株価と逆相関になりやすいゴールド(金)も売られた(下落した)ことは、機関投資家たちがリスク資産全般を投げ売りし、市場から逃げ出した兆候であると指摘されています。
個別銘柄およびセクターの動向
市場全体が下落する中、ハイテク・半導体セクターが特に大きく売られました。
半導体セクター
市場閉まる前の5分前には4%下落していました。
AMDは3%から4.9%の下落、NVIDIAはマイナス4%前後、マイクロンは7%安インテルは6%安となりました。
AMDの決算
第3四半期の決算はEPS、売上ともに予想を上回る好内容でしたが、市場の地合いの悪さに引っ張られ、アフターマーケットでマイナス3%程度の下落となりました。
また、アマゾンが第3四半期に保有していたAMD株を全て売却したことが、さらに嫌気されたようです。
スーパー・マイクロ・コンピューター
決算で売上とEPSが予想を下回り、さらに第2四半期のガイダンスも市場予想を大きく下回ったため、時間外で一時10%超下落しました。
テスラ
5%安となりました。
これは、ノルウェー政府系ファンドがイーロン・マスク氏の1兆ドルの報酬パッケージに反対票を投じたことが影響したと見られます。
アップル(Apple)
市場全体の下げの中で唯一プラス(0.4%上昇)で推移しました。
これは、Appleが初めて低価格帯ノートパソコン市場へ本格参入し、価格を1000ドル(約153,500円)を大幅に下回る水準にする計画が報じられたことが好感されたためです。
その他のセクター
市場を牽引してきた大型ハイテク銘柄が売られる一方で、ヒートマップを見ると、金融、ヘルスケア、非耐久消費財などは上昇している銘柄が多かったという特徴も見られました。
これは、これまでビッグテックが牽引してきた相場の「逆回転」が起こっていることを示唆しています。
市場の内部構造とリスク
S&P 500の強さは表面的なものであり、市場の内部では弱さが進行していることが指摘されています。
集中リスク
S&P 500指数は、AIを武器にした巨大テック企業に大きく依存しており、指数に連動する資金の約4割がわずか10社に集中しています。
上位5社(NVIDIA、マイクロソフト、アップル、アルファベット、アマゾン)だけで指数の約3割を占めており、S&P 500は実態として「テクノロジー特化のメガキャップファンド」に近い構造になっています。
内部の弱さ
S&P 500の構成銘柄のうち、30%以上が52週高値から20%以上下落しており、多くの中小銘柄はすでに弱気相場入りしています。
これは、市場全体の強さが一部の巨大テックによって支えられてきた結果であり、AD(騰落株線)ラインの低下からも確認できます。
ビッグテックが売られると、指数全体が大きく下落する傾向にあります。
投資家心理と今後の見通し
恐怖指数の上昇
恐怖指数であるVIXは2週間ぶりの高水準を記録し、投資家心理を示すフィア&グリード・インデックスは23まで下がり、「Extreme Fear(極度の恐怖)」の領域に入りました。
季節性と調整
過去のデータからは、S&P 500が10月末時点で15%以上上昇している場合、11月と12月は平均以上に上がりやすい傾向があるとされています。
また、5月から10月が強かった時は、その後4ヶ月間(11月~4月)は90%の確率で上昇するというデータもあります。
市場の調整は「余分な泡を落とす作業」であり、年末のラリーに向けて健全な動きだという見方もあります。
長期的な視点
相場は必ず乱高下を経験するものであり、過去の平均では1年に一度は高値から10%の大幅下落があり、2年に一度は15%の下落が発生すると指摘されています。
しかし、中長期的には強気の見方が残されており、AIブームはこれで終わることはないという意見もあります。


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