堤未果さん著『政府はもう嘘をつけない』を参考にしました。
パナマ文書
パナマ文書とは、2016年に世界中の政治家や大企業がタックスヘイブン(租税回避地)を利用して巨額の資金を隠していたことを明るみにした内部文書です。
堤未果さんは、この事件が単なる「脱税スキャンダル」ではなく、国家を超えて資本が動き、各国の政策を裏から操る構造を示した象徴的な事件だと指摘します。
税金を回避する富裕層や企業が存在する一方で、社会保障費や教育費が削減され、一般市民が負担を強いられる。
この構造の不公平こそが「政府が嘘をつけない」時代の出発点だと著者は訴えています。
大量の札束が降り注ぐ大統領選挙
アメリカの大統領選挙は莫大な資金が動くビジネスの場になっています。
堤さんは、選挙に投入される資金が「誰のための政治か」を明確に示していると指摘します。
表向きは「国民の選択」とされるが、実際にはスポンサー企業や金融機関が候補者を選別し、資金提供によって政策を左右する。
選挙とは民主主義の象徴ではなく、巨大資本が「投資回収」を行う市場になっているという現実が浮き彫りにされます。
アメリカには金で買えないものはない
この言葉は、アメリカ社会における「資本主義の行き過ぎ」を象徴しています。
教育・医療・司法・報道など、かつて公共性を持っていた分野までもが「お金で動く仕組み」に取り込まれているという批判です。
堤さんは、特に医療保険制度や教育ローン問題を例に、個人の生死や将来までもがビジネス化している現実を描きます。
「自由と民主主義の国」というイメージの裏側では、あらゆるものが価格で決まり、「買える者」が支配し、「買えない者」が沈む社会が広がっているのです。
カネ・ロビイスト・回転ドア
アメリカ政治の実態を象徴するのが「ロビイスト」と「回転ドア現象」です。ロビイストは企業や業界団体の利益を代弁し、議員に法案を有利に修正させます。
さらに、官僚や議員が退職後に企業へ高給で再就職し、企業側から再び政治に影響を及ぼす「回転ドア」が成立している。
この構造により、政策は常に「公共の利益」より「企業の利益」に偏り、国家は資本の下請け機関となる。
堤さんは、こうした癒着が民主主義を内部から腐らせていると警告しています。
非常事態宣言で政府は巨大な権力を手に入れる
堤さんは、国家が「非常事態」を口実に権力を集中させる危険性を指摘します。
戦争、テロ、パンデミック、災害などが起こると、政府は「国民の安全のため」として監視や統制を強化し、自由やプライバシーを制限する法案を通しやすくなります。
一度拡大した権力は、非常事態が終わっても戻らない場合が多く、結果的に国民の自由が奪われる。
著者は、非常時こそ「権力が何を手に入れようとしているか」を見抜く冷静さが必要だと説いています。
日本では三権分立より根回し
日本の政治文化には「三権分立」よりも「根回しと調整」を重視する傾向があると堤さんは述べます。
法の下で権力を分ける仕組みがあっても、実際には裏での人脈・派閥・談合が力を持ち、制度のバランスが機能しにくい。
重要政策が密室で決められ、形式的な議論で承認される構造が、「民主主義の形だけが残った国」を生んでいるのです。
この文化的な構造が、官僚主導や企業癒着を温存してきたと堤さんは分析しています。
人事を握れば官僚も黙る
官僚機構は本来、政治権力から独立した専門的組織ですが、人事権を握ることで政治家が支配する構図が生まれています。
堤さんは、内閣人事局の設立以降、官僚の昇進や配置が政権に左右されるようになり、「忖度」「沈黙」が蔓延していると指摘します。
官僚が国民のためではなく政権の意向に従うようになれば、政策決定は公正さを失う。
人事支配は「見えない言論統制」の一形態であり、民主主義を内部から崩すと警告しています。
必要なのは愛国官僚
堤さんは、政治や資本の圧力に屈しない「愛国官僚」の存在が不可欠だと述べます。
ここでいう「愛国」とは、権力者への忠誠ではなく、国民や公共への忠誠心のことです。
自らの出世や派閥よりも、国の根幹と正義を守る意思を持つ官僚がいなければ、制度は腐敗する。
堤さんは、内部告発者や職を賭して不正を止めた人々の例を挙げ、そうした人物こそが国を支える「本物の愛国者」だと訴えています。
教育ビジネスという名の投資商品がやってくる
教育もまた、巨大なビジネス市場になりつつあります。
アメリカでは教育が「投資対象」として扱われ、大学経営が企業化し、学生ローンが金融商品のように売買されています。
堤さんは、日本でも教育の民営化や英語教育改革、大学の株式会社化などが進み、「学ぶ権利」が「儲けの手段」に変わりつつあると警鐘を鳴らします。
教育の目的が人材育成ではなく利益確保になれば、未来を担う若者が搾取される構造が生まれるというのです。
法律は点でつなげて線で見る
堤さんは、個々の法律や制度を「点」で見るのではなく、「線」でつなげて全体像を把握することの重要性を説きます。
例えば、監視法、マイナンバー、デジタル化、非常事態法などを別々に見ると小さな変更に見えるが、つなげてみると「国民監視の強化」という一本の線が浮かび上がる。
法制度の「積み重ね」がどんな社会を形づくるのかを読み解く力が、市民に求められています。
儲かりすぎてやめられないテロとの戦い
「テロとの戦い」は、実は軍需産業やセキュリティ企業にとって莫大な利益を生むビジネスでもあります。
堤さんは、戦争が「悲劇」であると同時に「市場」であるという現実を暴きます。
戦争が長引けば長引くほど、武器・防衛・監視・保険など関連産業が潤い、国家予算が企業へ流れる。
結果として「平和よりも戦争の方が儲かる構造」が出来上がり、テロを名目にした「永続的戦争経済」が続くのです。
ギリシャ破綻で笑いが止まらないメルケル首相
ギリシャの財政破綻は、欧州経済の歪みと金融支配の象徴でした。
堤さんは、ドイツ主導の緊縮政策がギリシャ国民を苦しめる一方で、金融機関や政治指導者が得をする構造を指摘します。
ドイツやEU中枢は「救済」を掲げながら、実際には貸付金の利子や債権操作で利益を得ていた。
結果として、支配者層は笑いが止まらず、庶民が犠牲になるという「経済版の植民地支配」が進行していたのです。
香港の雨傘革命もメイドインアメリカ
香港で起きた雨傘革命は、市民の民主化要求として報じられましたが、堤さんはその背後にアメリカの支援組織やNPOの存在を見ています。
アメリカが「民主主義支援」の名のもとに他国の政治運動を資金や情報で支援し、体制転覆を狙う手法は、過去にも多くの国で行われてきました。
著者は、理想に見える運動の裏に「地政学的な思惑」が潜むことを知るべきだと訴えます。
民主化運動が純粋な市民の声ではなく、国際政治の道具になる危険性を示しています。
日本で真実を見抜く方法
堤さんは、真実を見抜くためには「情報の裏にある構造」を読み解く力が必要だと説きます。
ニュースをそのまま信じるのではなく、「誰が得をするのか」「資金はどこから流れているのか」を常に考えること。
さらに、海外メディアや一次資料にあたる習慣を持ち、国内報道との違いを比較することで、情報の偏りに気づけるといいます。
真実は一つではなく、見方によって変わる―だからこそ、「疑うこと」が知ることの第一歩だと強調します。
この本のまとめ
『政府はもう嘘をつけない』は、政治・経済・教育・戦争といったテーマを貫く「資本と権力の結びつき」を暴き、市民がその構造を見抜くことの重要性を訴えた作品です。
政府は情報を隠せても、お金の流れまでは隠せない。
堤さんは、「お金を追えば真実が見える」と語り、私たちに「疑う力」と「線で見る眼」を持つよう促します。
国家や企業が主語の時代から、「わたしたち市民」が主語となる時代へ。
そのために必要なのは、知り、問い、行動する意識です。


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