市場の反発と経済指標

11月21日の米国株価は、乱高下が激しかったものの、なんとか持ちこたえています。
ダウ平均株価は一時的に大幅に反発しました(約1%の上昇)。
しかし、週間で見るとS&P 500とナスダックはともに約2%の下落となっており、市場の調整が続いていることが示されています。
この反発の主なきっかけは、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が「近い将来に利下げ余地がある」と示唆した発言です。
この発言により、利下げの確率は前日の40%未満から一気に70%へ急上昇しました。
一方で、経済指標は弱さを示しています。
11月のアメリカ製造業PMI(景況感)は51.9に低下し、4ヶ月ぶりの低水準となりました。
特に新規受注の伸びが悪く、完成品の在庫が記録的な増加を示しており、消費が伸びていないことがわかります。
また、ミシガン大学の消費者信頼指数も2009年以降で最悪の水準に近づいており、物価高と実質所得の低下に対する不満が根強い状況です。
これらのセンチメントの冷え込みは、インフレが落ち着く傾向にあることを示唆しています。
金融政策と利下げ観測
ウィリアムズ総裁は、政策を中立金利に近づけるための調整の余地があるとし、これはFRBのタカ派的なコメントが一際出ない中で飛び出したハト派的な発言として市場に受け取られました。
市場は、利上げ停止から利下げへの流れにおいて、初期の利下げ観測が漏れ始めるタイミングで資産価格が最も大きく動くと敏感に反応しています。
しかし、FRB内では意見の対立も見られます。
一部の慎重派は高金利が当面続くと考えており、FOMC内部で利下げ派と慎重派の綱引きが鮮明になっています。
さらに、雇用統計やCPI(消費者物価指数)といった重要な経済指標の発表が中止されたり遅れたりする「データ空洞」の状況が、政策判断の不確実性を高めています。
このため、データに基づかない予防的な利下げは難しいのではないかとの見方もあります。
AI・半導体セクターの現状と懸念
ハイテク株、特にAI関連株は依然として大きな注目を集めていますが、懸念も根強くあります。
NVIDIAの動向と中国輸出検討
トランプ政権がNVIDIAの最先端AIチップ「H200」の中国への輸出を検討しているとの報道がありました。
これは輸出規制の象徴であったAIチップの規制緩和の可能性を示唆しており、企業側の売上確保とAI需要の継続というポジティブなメッセージとなり得ます。
しかし、NVIDIAの株価自体は、決算が非常に良かったにもかかわらず、期待された動きを見せていません。
AIバブル懸念
AI関連のバリュエーション(評価額)が加熱しすぎているとの懸念が再燃しています。
アナリストからは、巨額のAI設備投資(AI CAPEX)が回収できるのかという懸念(マネタイゼーション)が中心的な課題となっています。
一部のアナリストは、現在の株価の上昇を「ITバブルの再来」とは見ていませんが、投資が逆回転し、バリュエーションが剥がれ落ちるリスクは存在します。
セクターの分裂
S&P 500のヒートマップを見ると、AIの中核銘柄(NVIDIA、AMDなど)が調整を継続しているのに対し、データセンター以外の旧来型の半導体が買われるというセクター内の分裂現象が見られます。
これは、市場がAIの本丸への資金回帰にまだ確信を持てていないことを示唆しています。
市場のリスクと投資家心理
現在の相場は非常にリスクが高い状況にあると評価されています。
ビットコインの暴落と株高の逆相関
通常、リスク資産全体が連動して動くのに対し、今回はビットコインが最高値から40%近く急落しているにもかかわらず、米国株が急反発するという異例の動きを見せました。
この動きは、資金が暗号資産から株にシフトしたという見方もありますが、暗号資産の暴落が数週間後に株の崩壊を先行して示すパターンが過去にあったため、警戒が必要な危険信号と見る向きもあります。
資金フローの矛盾
株高、金(ゴールド)の上昇、債券の上昇、原油の下落、暗号資産の暴落といった、通常は同じ方向に動くはずの資産が逆方向に動く「分裂相場」が起きています。
これは、投資家が表向きはリスクオンの姿勢をとりつつ、裏側ではリスクヘッジを全力で積み上げている慎重な心理の現れと考えられます。
投資家心理と調整局面
投資家センチメントは「極端な恐怖と不安」を示しており、市場の悲観が行き過ぎているとの見解もあります。
一部のアナリストは、この下落を「弱い投資家を振り落とすために必要な、健全で予想された調整(ガス抜き)」であると見ています。
真の買い場とされるVIX指数が40レベルに達するには、まだ恐怖が足りないという意見もあります
投資戦略の視点
短期的な相場は荒れた値動きが続く可能性がありますが、中長期的な見通しは依然として明るく、株式は上昇していくと見られています。
投資家は、大きな利益を上げるよりも、大きな損失を出さないことを優先し、キャッシュポジションを多めに持つなどディフェンシブな姿勢が賢明であるとされています。
長期投資においては、市場のリスクではなく、自身の感情(衝動)に流されないことが重要です。
米国株市場は現在、「利下げ期待」という追い風と、「AIバブル懸念や経済指標の冷え込み」という逆風が同時に存在し、不安定な均衡状態にあります。
この状況は、あたかも車がアクセル(利下げ期待)とブレーキ(景気後退シグナル)を同時に踏んでいるような状態で、次にどちらの力が優勢になるかで、市場は大きく方向性を決める分岐点に立っていると言えます。


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