宅建業法における免許制度は、高額な不動産取引において消費者を保護し、適正な業務運営を確保するために設けられた非常に重要な仕組みです。
以下にその内容を詳しく解説します。
免許の種類と免許権者
宅建業の免許には、事務所の設置状況に応じて2つの種類があります。
免許を与える権限を持つ行政機関を「免許権者」と呼びます。
都道府県知事免許
1つの都道府県内だけに事務所を設置して業務を行う場合に必要です。
同一県内に複数の事務所があっても知事免許となります。
国土交通大臣免許
2つ以上の都道府県にまたがって事務所を設置する場合に必要です。
例えば、東京都と神奈川県の両方に事務所がある場合などが該当します。
なお、免許は事務所の場所によって区分されますが、効力は全国に及びます。
神奈川県知事免許の業者であっても、他県(例:愛知県)で不動産取引の営業を行うことは可能です。
【2025年の改正点】
従来、大臣免許の申請は主たる事務所の知事を経由して行っていましたが、現在は直接、国の地方整備局等へ申請する形式に変更されています。
免許の有効期間と更新
有効期間
免許の有効期間は5年間です。
更新手続
引き続き業務を行う場合は、有効期間満了日の90日前から30日前までの間に更新申請を行う必要があります。
更新中の効力
更新申請を適切に行ったにもかかわらず、免許権者の処分が遅れて有効期間が満了してしまった場合、新たな免許が出るまでは従前の免許が有効とみなされ、業務を継続できます。
更新後の期間
新たな免許の有効期間は、従前の免許満了日の翌日から5年間となります。
免許換え
事務所の新設、移転、廃止によって免許権者が変わる場合、新たに「免許換え」の申請を行う必要があります。
知事から大臣へ
他の都道府県に事務所を新設した場合など。
大臣から知事へ
1つの都道府県内だけの事務所になった場合など。
知事から他の知事へ
事務所を別の都道府県へ完全移転した場合など。
免許換えによって取得した新免許の有効期間は、その取得した日から5年間となります(更新時のカウント方法とは異なるため注意が必要です)。
宅建業者名簿と変更の届け出
免許権者は「宅建業者名簿」を作成し、一般に公開(閲覧)しています。
名簿の登載事項
免許証番号、商号・名称、役員の氏名、事務所の名称・所在地、兼業の種類などが含まれます。
変更の届け出
名簿の記載事項(商号、役員・政令で定める使用人の氏名、事務所の名称・所在地、専任の宅建士の氏名など)に変更があった場合、30日以内に免許権者へ届け出なければなりません。
注意点
役員や使用人の「住所」や「本籍」は、個人情報保護の観点から名簿には載らないため、変更の届け出は不要です。
廃業等の届け出と「みなし業者」
宅建業を辞める際や業者が死亡した際などは、30日以内に届け出が必要です。
死亡
相続人が、その事実を知った日から30日以内に届け出ます(免許は死亡時に失効します)。
合併による消滅
消滅した会社の代表役員が届け出ます(免許は合併時に失効します)。
廃業・破産
本人、代表役員、または破産管財人が届け出ます(免許は届け出時に失効します)。
【みなし業者の特例】
業者が死亡したり免許が失効したりしても、既に締結していた契約の取引が残っている場合、その取引を完了させる目的の範囲内で、その相続人等は「宅建業者」とみなされて業務を行うことができます。
免許の欠格事由(免許を受けられない場合)
一定の条件に該当する者は、宅建業にふさわしくないと判断され、免許を受けることができません(または取り消されます)。
犯罪歴
禁錮刑以上の刑(全犯罪対象)や、宅建業法違反、暴力的な犯罪による罰金刑を受けた場合、刑の終了から5年を経過するまで免許を受けられません。
執行猶予
執行猶予期間中は免許を受けられませんが、期間が満了すれば直ちに免許取得が可能になります。
不正による取消し
不正手段での免許取得や業務停止処分違反などで免許を取り消された場合、取消日から5年間は再取得できません。
破産者
破産手続開始の決定を受け、復権を得ていない者。
暴力団員
暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者。
禁止事項(無免許営業と名義貸し)
無免許営業の禁止
免許を受けずに宅建業を営むことや、免許を受ける前に広告を出すことも禁止されています。
名義貸しの禁止
免許を持っている者が、他人にその名義を貸して宅建業を営ませることは厳禁です。
個人と法人の区別
個人の免許を法人が承継することはできず、法人化する場合は新たに法人の免許を取得する必要があります。
免許不要の特例
以下の団体は、宅建業法の免許を受けずに宅建業を営むことができます。
国および地方公共団体
信託会社・信託業務を兼営する金融機関
免許は不要ですが、国土交通大臣への届け出が必要であり、免許以外の規定(監督処分など)は適用されます。
注意
農業協同組合(JA)は免許が必要です。
ここは試験で狙われやすいポイントです。
宅建業の免許制度は、言わば「不動産取引という大きな航海に出るための許可証」のようなものです。
この許可証は一度手に入れれば終わりではなく、5年ごとの更新や、組織に変更があった際の報告、そして何より法令を遵守し続けるという「航海士としての資質」が常に問われ続ける仕組みとなっています。


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