宅地建物取引業法における営業保証金制度について、その仕組み、業務開始までの流れ、金額の計算、還付や取戻しの手続きまで、詳細に解説します。
営業保証金制度の概要と目的
この制度は、宅建業者が万が一倒産したり、取引でトラブルが発生したりした際に、お客様(消費者)が被った損害を最低限保証し、保護することを目的としています。
宅建業者は高額な不動産を扱うため、トラブル時の損失も大きくなりがちです。
そのため、あらかじめ業者にお金を預けさせておき、何かあった場合にはその預けたお金からお客様に弁済される仕組みになっています。
なお、この制度は消費者保護を目的としているため、宅建業者間(プロ同士)の取引において生じた債権は還付の対象外となります。
業務開始までの流れと事務所増設
宅建業者が免許を取得しても、すぐに業務を開始することはできません。
以下の順番を守る必要があります。
1. 免許の取得
2. 営業保証金の供託・主たる事務所(本店)の最寄りの供託所にお金を預けます。
3. 免許権者への届け出・供託したことを免許権者(知事や国土交通大臣)に届け出ます。
4. 業務開始・届け出をして初めて業務をスタートできます。
事務所を増設する場合も同様の流れです。
増設した事務所の分も、「主たる事務所」の最寄りの供託所に追加で供託し、届け出た後に新しい事務所での業務を開始できます。
【期間に関する注意点】
免許取得から3ヶ月以内に供託の届け出がない場合、免許権者は催告をしなければなりません。
その催告が到達してから1ヶ月以内に届け出がないときは、免許権者は免許を取り消すことができます(必ず取り消されるわけではない任意処分です)。
営業保証金の供託額と方法
供託すべき金額は、事務所の数に応じて決まっています。
主たる事務所(本店)
1,000万円
従たる事務所(支店)
1箇所につき 500万円
例えば、本店1つと支店2つを持つ業者の場合、合計で2,000万円を「本店」の最寄りの供託所に一括で供託しなければなりません。
供託の方法
現金(金銭)だけでなく、一定の有価証券で行うことも可能です。
ただし、種類によって評価額(価値の認められ方)が変わります。
国債証券
額面の 100%
地方債証券・政府保証債証券
額面の 90%
その他の有価証券
額面の 80%
※株券や小切手、手形は認められていません。
主たる事務所を移転した場合(保管替えと二重供託)
本店の移転により最寄りの供託所が変わる場合、供託しているものの内容によって手続きが異なります。
金銭のみで供託している場合(保管替え)
移転前の供託所に対し、移転後の供託所への「保管替え」を請求します。
これにより、お金がそのまま移動します。
有価証券が含まれる場合(二重供託)
保管替えができないため、まず移転後の供託所に新たに全額を供託(二重供託の状態)し、その後、古い供託所からお金を取り戻す手続きをとります。
営業保証金の還付(お客様への支払い)
取引で損害を受けたお客様は、業者が供託している営業保証金から支払い(還付)を受けることができます。
還付を受けられる人
宅建業に関して取引をした者。
ただし、宅建業者は除外されます。
還付の対象外
広告代金の請求権、銀行の融資、従業員の給料などは還付の対象になりません。
限度額
その業者が供託している営業保証金の総額が限度となります。
事前の説明
業者は契約が成立するまでの間に、供託所の所在地などを説明しなければなりません(金額の説明は不要です)。
不足分の追加供託
還付によって供託金が不足した場合、業者は免許権者から通知を受けた日から2週間以内に不足分を供託し、さらにその日から2週間以内に届け出を行う必要があります。
営業保証金の取戻し
廃業したり事務所を減らしたりした場合、業者は預けていたお金を返してもらう(取戻し)ことができます。
原則として、還付を希望する人がいないかを確認するため、6ヶ月以上の期間を定めて公告(官報への掲載など)をしなければなりません。
ただし、以下の場合は公告なしですぐに取り戻せます。
1. 二重供託をした後の旧供託金を取り戻す場合
2. 保証協会の社員(メンバー)となった場合
3. 取戻し事由が発生してから10年が経過した場合
最後に
営業保証金制度は、いわば「お店がお客様にかける強制加入の保険代」のようなものです。
お店(業者)が万が一のときにお客様に支払うお金を、あらかじめ中立な場所(供託所)に預けておくことで、お客様は安心して高額な取引ができるようになっています。


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