ユダヤ教とその歴史

歴史

ユダヤ教は、キリスト教やイスラム教と共通の神を信じ、同じ聖地、同じ中東を起源とする三つの宗教の中で、最も古い歴史を持つ宗教であり、キリスト教とイスラム教にとっては原点となる宗教です。

成立と起源

ユダヤ教が誕生したのは紀元前13世紀頃で、今から3000年以上も前のことです。

物語の始まりは、紀元前18世紀頃、メソポタミア文明のウルという都市に住んでいたアブラハムという人物にさかのぼります。

聖書によると、神への信仰心が強かったアブラハムとその子孫は神に選ばれし民となり、神から約束の地カナン(現在のイスラエル)を与えられました。

その後、ユダヤ人の祖先にあたる遊牧民族はエジプトで奴隷として過酷な強制労働を強いられていました。

この遊牧民族を救うため、神はモーセというリーダーに使命を与えます。

モーセは神の助けを得て、遊牧民族をエジプトから脱出させ、その旅の途中で神からモーセの十戒と呼ばれる10の決まりごと(教え)を授かりました。

この十の教えを守ると誓ったことが、神と遊牧民族の間で結ばれたユダヤ教の源流とされています。

エジプト脱出に成功した遊牧民族は、カナン(イスラエル)の地に戻り、ユダヤ人のための国、イスラエル王国を建国します。

中心的な教義と特徴

ユダヤ教は、唯一絶対的な神(ヤハウェ)を信仰する一神教です。

神の名をみだりに唱えることは禁止されており、その正確な発音は歴史の中で忘れ去られています。

ユダヤ教徒は、神との契約や、モーセの十戒を始めとする律法(生活の細かな決まりごと)を厳格に守ることで救済が得られるという考え方を基本としています。

律法は、食事の規定、安息日の過ごし方など、日常生活のありとあらゆる事柄について定められています。

ユダヤ教の経典は、キリスト教では旧約聖書と呼ばれるヘブライ語聖書であり、律法書・予言書・諸書から構成されています。

また、律法書に口伝や注釈を加えたタルムードも、ルールを遵守する上で非常に重要とされています。

選民思想(排他性)

ユダヤ教の最大の特徴は、選民思想を強く持つ点にあります。

ユダヤ教は、エジプトでの奴隷労働に苦しんでいた遊牧民族が、自分たちだけが救われるために作り出した宗教であり、神は彼らに対してのみ「あなたたちは特別に選ばれた人たちです」と伝えています。

この「私たちだけが神に選ばれた民」という意識から、ユダヤ教は非常に排他的な宗教であり、ユダヤ人が世界中の人々を改宗させようという活動(布教)は行いません。

ユダヤ教徒は、この強い選民思想によって、歴史上の数多くの迫害を「神が特別な民である私たちに与えた試練」と捉え、乗り切ってきました。

救世主(メシア)と終末観

ユダヤ教徒は、この世の終わりが近づいたら、やがて救世主(メシア)が現れ、ユダヤの民を救ってくれると信じており、今もなおその出現を待ち続けています。

最終的に、世界最後の日には、ユダヤ人が勝利し、天国へ導かれ永遠の命を得るという終末観を持っています。

歴史と迫害

イスラエル王国は、周辺の強国からの侵略を受け、最終的には紀元前後にローマ帝国の支配下に置かれます。

ユダヤ人によるローマへの反乱が起こると、彼らはイスラエルから追い出され(離散)、ヨーロッパ各地に散り散りになり、コミュニティを作って暮らすようになりました。

ヨーロッパでは、ユダヤ教から派生したキリスト教が広範囲に信仰されるようになります。

キリスト教徒の間では、ユダヤ人はイエスを救世主だと認めず、イエスを処刑に追いやった者とみなされていたため、法律や社会制度のレベルで激しい差別や迫害を受けました。

ユダヤ人は迫害の中で、土地を持つことを法律で禁止されていたため、土地を必要としない貿易業や金融業(金貸し業)に活路を見出しました。

特に金貸し業は、キリスト教では聖書の解釈に基づき一般的に禁じられていましたが、ユダヤ教では「同胞(ユダヤ人)以外には利子をつけても良い」と解釈されたため、積極的に行われました。

迫害された経験から生まれた世界中に散らばったユダヤ人同士の強いネットワークが、貿易や金融の成功に大いに役立ち、彼らは世界でも有数の富豪となっていきました。

しかし、この経済的な成功はキリスト教徒の嫉妬の対象となり、ユダヤ人に対する陰謀論が世界中に広がる原因にもなりました。

20世紀には、ナチス・ドイツによるホロコーストが発生し、約600万人ものユダヤ人が虐殺されるという悲劇に見舞われました。

この大虐殺への反省から、世界中で差別反対の機運が高まり、現代ではユダヤ人は世界中で生活していますが、個人レベルでの嫉妬や陰謀論は依然として存在しています。

キリスト教との関係

ユダヤ教とキリスト教は、ユダヤ教の教えに疑問を持ったイエスというユダヤ人から始まりました。

イエスは、ユダヤ教の「神に選ばれたユダヤ人しか救われない」という選民思想に異を唱え、「神を信じさえすれば、ユダヤ人であるかどうかに関わらず、全ての人類が平等に救われる」という新しい考え方を説きました。

ユダヤ教の厳格な信仰者たちは、イエスの行動は律法を破り、ユダヤの考え方を否定する反逆行為とみなし、彼を捕らえて処刑しました。

イエスを救世主(キリスト)だと信じる弟子たちによって広まったのがキリスト教です。

ユダヤ教はイエスを単なる改革者または偽預言者・反逆者とみなし、キリスト教の経典である新約聖書を認めていません。

この救世主についての認識の違いが、両宗教の決定的な対立の原因となっています。

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