宅建業法における「事務所」と「案内所等」は、宅建業者が業務を行う拠点として明確に区別されており、それぞれ設置義務のあるものや届け出のルールが異なります。
事務所の定義と種類
宅建業法上の「事務所」には、大きく分けて以下の3つの形態があります。
本店(主たる事務所)
宅建業を営んでいなくても、支店で宅建業を営んでいる場合は、本店も「事務所」としてカウントされます。
本店は支店を統括する立場であるため、支店が宅建業を行うなら本店も無関係ではいられないという考え方に基づいています。
支店(従たる事務所)
支店の場合は、実際に宅建業を営んでいる場合のみ「事務所」に該当します。
例えば、建設業のみを行っている支店は事務所としてカウントされません。
継続的業務を行う施設
営業所など、継続的に業務を行うことができる施設を有し、宅建業に係る契約締結権限を持つ使用人を置く場所を指します。
案内所等の定義と種類
事務所とは別に、分譲地やイベント会場などで業務を行う場所を「案内所等」と呼びます。主に以下の5つのケースがあります。
1. 継続的に業務を行う施設を有する場所で、事務所ではないもの(現地出張所など)。
2. 一団の宅地建物の分譲を行う際の案内所(分譲地の現地案内所など)。
3. 他社の分譲物件の代理・媒介を行う際の案内所。
4. 展示会や不動産フェアなどの催しを実施する場所。
5. 宅建業者が分譲を行う際に、その物件が所在する場所(マンション販売の現地など)。
これらはさらに、「契約等の締結または申し込みを受ける場所」と「申し込みを受けない場所」の2種類に分類されます。
案内所等の設置に関する届け出
契約や申し込みを行う案内所等を設置する場合、宅建業者は以下のルールに従って届け出を行う必要があります。
対象
契約の締結または申し込みを受ける案内所等(受けない場所は届け出不要)。
届け出先
「免許権者」および「案内所の所在地を管轄する都道府県知事」の両方です。
例えば、東京都知事免許の業者が神奈川県に案内所を出すなら、両方の知事に届け出ます。
2025年改正点
免許権者が国土交通大臣の場合、以前は知事経由でしたが、直接「地方整備局」に届け出る形に変更されました。
時期
業務開始の10日前までに行わなければなりません。
内容
業務場所、内容、期間、および専任の宅建士の氏名を届け出ます。
事務所・案内所等に設置すべき「5点セット」
各場所には、法律で設置が義務付けられているものがあります。
特に事務所に設置が必要な5つのアイテムは「5点セット」として重要です。
標識
事務所(設置義務あり) ・案内所(契約あり) (設置義務あり )・案内所(契約なし)(設置義務あり)
報酬額の掲示
事務所(設置義務あり) ・案内所(契約あり) (設置義務なし)・案内所(契約なし)(設置義務なし)
従業者名簿
事務所(設置義務あり) ・案内所(契約あり) (設置義務なし)・案内所(契約なし)(設置義務なし)
帳簿
事務所(設置義務あり) ・案内所(契約あり) (設置義務なし)・案内所(契約なし)(設置義務なし)
専任の宅建士
事務所(5人に1人以上 ) ・案内所(契約あり) (1人以上)・案内所(契約なし)(設置義務なし)
各項目の詳細ルール
標識
すべての場所に設置が必要です。
2025年の改正により、標識から「専任の宅建士の氏名」が削除され、代わりに「専任の宅建士の人数」と「事務所の代表者等の氏名」を記載することになりました。
報酬額の掲示
お客さんから受け取る手数料の上限を示すもので、事務所のみに掲示義務があります。
従業者名簿
アルバイトを含む全従業員を記載します。
取引関係者から閲覧請求があれば見せる義務があり、10年間保存が必要です。
帳簿
取引の都度記載する記録台帳です。
取引関係者への閲覧義務はありません(個人情報が含まれるため)。
原則5年間保存ですが、自ら売主となる新築住宅に関しては10年間保存となります。
専任の宅建士
契約行為を行う場所には必須です。
事務所では「5人に1人以上」ですが、案内所等では人数に関わらず「1人以上」いれば足ります。
従業者証明書の携帯
設置物とは別に、事務所や案内所等で働くすべての従業員(パート・アルバイト、役員含む)は、常に「従業者証明書」を携帯していなければなりません。
取引の相手方から提示を求められた際、宅建士証や従業者名簿で代用することはできず、必ずこの証明書を見せる必要があります。
最後に
事務所と案内所の関係は、「学校の本校」と「期間限定の校外学習テント」のようなものです。
「本校(事務所)」には、生徒名簿や成績表(帳簿・名簿)、先生の配置ルール、授業料の掲示など、運営に必要なすべてを揃えておく必要があります。
一方で、駅前などに一時的に出す「校外学習テント(案内所)」は、そこで入学手続き(契約)をするなら責任者(宅建士)が必要ですが、パンフレットを配るだけなら、看板(標識)さえ出しておけば、詳細な名簿や掲示物は本校に任せておいても良い、というイメージです。


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