宅建業法・広告規制

宅建士

宅地建物取引業法(宅建業法)における広告規制は、消費者が誇大な表現や事実と異なる情報によって不利益を被らないように定められた非常に重要なルールです。

この規制は、新聞、チラシ、雑誌、テレビ、そして現代で主流となっているインターネット広告など、あらゆる媒体が対象となります。

主な規制内容は、大きく分けて「誇大広告等の禁止」「取引態様の明示義務」「広告開始時期の制限」の3つに分類されます。

それぞれの詳細について、詳しく解説します。

誇大広告・おとり広告の禁止

宅建業者は、物件の所在、規模、形質、周辺環境、代金や支払い方法などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させるような表示をしてはなりません。

積極的な嘘だけでなく「事実を表示しないこと」も禁止

「嘘はついていないが、あえて都合の悪い事実を伝えない」ことで客を誤認させる消極的な方法も、誇大広告に該当します。

実害の有無は問わない

その広告を信じて契約を結び、実際に被害が出たかどうかは関係ありません。

誇大広告を行ったという事実だけで宅建業法違反となります。

おとり広告の禁止

実際には存在しない物件、存在するが売る気がない物件、あるいは売ることができない物件を広告し、来店した客に別の物件を紹介するような「釣り行為」は厳しく禁止されています。

規制対象の内容

物件に関する事項

面積や間取り(例:実際は2LDKなのに3LDKと表示する)など。

周辺環境・利便性

交通機関(例:地下鉄の駅がないのに「ある」とする)、将来の見込み(例:将来こうなる「かもしれない」という不確実な表示)など。

金銭に関する事項

代金、借賃、支払い方法、ローンの斡旋など。

取引態様の明示義務

広告を行う際、宅建業者は自分がどのような立場でその取引に関わるのか(取引態様)を明示しなければなりません。

明示のタイミング

広告を行うとき

広告を出すたびに毎回明示する必要があります。

複数回に分けてチラシを出す場合、最初だけでなく毎回載せなければなりません。

注文を受けたとき

広告ですでに伝えていたとしても、客から問い合わせや注文があった際に、改めて遅滞なく明示する必要があります。

明示の方法

書面である必要はなく、口頭でも認められます。

対象外となる取引

「自ら貸借(自分が大家として貸すこと)」はそもそも宅建業の「取引」に該当しないため、この明示義務は適用されません。

未完成物件の広告・契約開始時期の制限

建物がまだ建っていない、あるいは土地の造成が終わっていない「未完成物件」については、トラブルを防ぐため広告や契約の時期が厳格に制限されています。

広告開始の時期

開発許可や建築確認などの必要な許可・処分があった後でなければ、広告を開始してはいけません。

「申請中」や「許可が下りる見込み」といった段階での広告(予告広告・見込み広告)は一切禁止されています。

契約締結の時期

原則として、広告と同様に許可等の処分後でなければ契約(予約を含む)を結ぶことはできません。

売買と貸借の違い

ここが重要なポイントです。

売買・交換

広告も契約も、許可等の「後」でなければ一切不可です。

貸借(賃貸)

広告については許可等の「後」である必要がありますが、契約については許可等の「前」であっても制限を受けません。

これは、賃貸は売買に比べて金額が小さく、消費者への損害が相対的に少ないと考えられるためです。

違反した場合の罰則

これらの規制に違反すると、監督処分の対象となるほか、重い罰則が科されることがあります。

誇大広告の場合

監督処分に加え、「6ヶ月以下の懲役」もしくは「100万円以下の罰金」、またはその両方が科される可能性があります。

取引態様の明示を怠った場合

監督処分の対象にはなりますが、罰則(懲役や罰金)はありません。

最後に

未完成物件の広告規制は、いわば「まだメニューが決まっていないレストランが、看板を出すこと」を禁じているようなものです。

役所から「この料理を作っていいですよ」という許可(建築確認など)が出て初めて、お店は「こんな料理が出ます」と宣伝できるようになります。

そうしないと、いざお客さんが来た時に「やっぱりその料理は作れませんでした」というトラブルになってしまうからです。

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