遺伝子組み換え食品

健康

遺伝子組み換え食品(Genetically Modified Organism, GMO)について、詳しく解説します。

遺伝子組み換え技術の定義と目的

遺伝子組み換えとは

遺伝子組み換え(GM)技術とは、生物が持つ遺伝子の一部を人工的に操作し、人間に都合の良い特定の性質を与える生物や食品を作り出す技術です。

これは、ある生物の有用な性質を持つ遺伝子を、別の生物の細胞の遺伝子に組み込むことによって、その性質を変化させる行為を指します。

品種改良との違い

従来の品種改良(育種)は、同じ種類または近い種類の生物同士を交配させ、目的の性質を持つ個体を選抜し、その交配を繰り返すことで品種を改良してきました。

これは自然界でも起こりうる現象で、完了するまでに数年、または果樹などでは数十年かかることもあります。

一方、遺伝子組み換えは、種の壁を超えて、まったく別の生き物から遺伝子を取り出して組み込む、完全に人工的な技術です。

この技術により、品種改良よりも格段に効率良く、短期間で新しい特性を持たせることが可能になりました。

主な目的と応用例

遺伝子組み換えの主な目的は、除草剤耐性と殺虫性(害虫抵抗性)の付与です。

除草剤耐性

特定の除草剤(例:ラウンドアップに含まれるグリホサート)を大量に散布しても、作物自体は枯れないようにする遺伝子を組み込みます。

これにより、雑草の管理にかかる労力を削減し、大量生産を容易にします。

除草剤耐性作物は、多くの場合、その除草剤とセットで販売されます。

殺虫性(害虫抵抗性)

害虫が作物を食べた際に、虫の消化管を破裂させて殺虫する毒素(BT毒素/レクチン)を自ら生成するように遺伝子を組み込みます。

これにより、農薬の使用量を減らすことが期待されます。

その他の応用例

栄養素の向上

体内でビタミンAに変換されるベータカロテンを豊富に含むように改良された「ゴールデンライス」など、栄養価を高める研究も進んでいます。

医薬品の製造

糖尿病患者が使用するインスリン製剤は、インスリンを生み出す大腸菌を遺伝子組み換えで作り出すことで、大量かつ安全に製造されています。

遺伝子組み換え食品の安全性と危険性の懸念

現在の科学的見解

世界保健機関(WHO)やアメリカ、ヨーロッパなどの国際機関や規制当局は、現在市場に出回っている遺伝子組み換え食品は、人や動物への健康被害はなく、安全に利用できるという見解を示しています。

これらの食品は、アレルギー性、毒性、栄養成分の変化、遺伝子の水平伝播などの観点から、厳格な安全評価を受けています。

長期的な安全性に関する懸念

一方で、遺伝子組み換え食品の安全性をめぐっては、長期的な影響については「確証がない」というのが現状であり、安全か危険かはっきりしないという意見も根強く存在します。

証明の難しさ

100%安全であると保証することは、存在しないことを証明する「悪魔の証明」に近いため、極めて困難です。

アレルギーリスク

遺伝子改変によってタンパク質の構造が変化し、未知のタンパク質が生まれ、アレルギーが起こる可能性がわずかにあります。

毒性・発がん性の指摘

2012年にフランスで発表された、遺伝子組み換えトウモロコシをラットに与えたところ、腫瘍が形成されたとする論文が有名ですが、この論文は後に実験に不備があったとして撤回されています。

ただし、この件は消費者の間に不安を煽る一因となりました。

消化管への影響

殺虫成分(BT毒素)は、人間の消化器(酸性)には無害とされていますが、殺虫成分を含む作物を食べ続けることによる人への長期的な影響(例:腸のリーキーガット化、癌、不妊症など)を懸念する声も一部で上がっています。

DNAへの影響の否定

遺伝子組み換え食品を食べたとしても、人間のDNAが改変されたり、突然変異を起こしたりする可能性は、生物の構造上あり得ないと考えられています。

環境・生態系への影響

遺伝子組み換え作物の花粉が風によって飛び散り、野生種や在来種と交雑してしまうことで、遺伝子汚染が生じる可能性が指摘されています。

在来種の消失

例えばメキシコでは、栽培が禁止されているはずの組み換え遺伝子が在来種のトウモロコシから発見され、貴重な遺伝資源が失われる危機にさらされています。

スーパー雑草の出現

除草剤耐性の作物を使い続けると、除草剤に耐性を持つ雑草が出現し(スーパー雑草)、生態系に悪影響を与える可能性も懸念されています。

日本における遺伝子組み換え食品の現状と表示制度

輸入と消費の状況

日本国内では商業的な遺伝子組み換え作物の栽培は基本的に行われていません。

しかし、日本は食料自給率が低く(約40%)、海外からの輸入に大きく頼っています。

日本は世界でも有数の遺伝子組み換え作物の輸入国の一つであり、年間1000万トン以上を輸入しています。

世界的な人口差を考慮すると、日本人が相対的に世界一遺伝子組み換え食品を口にしていると考えられています。

主に輸入されているのは、大豆、トウモロコシ、ナタネ(菜種)、綿実などで、これらの輸入作物の約9割が遺伝子組み換え品種と推定されています。

表示制度(2023年4月変更)

日本の食品表示基準は、欧州連合(EU)の基準(全てのGM使用に表示義務あり)と比較して「かなり甘い」と評されています。

表示義務なし

遺伝子組み換えされたDNAやタンパク質が最終製品に残っていない加工品には、表示義務がありません。

これには、食用油(サラダ油、菜種油、大豆油)、醤油、異性化糖(加糖ブドウ糖液糖)、コーンスターチなどが含まれます。

また、GM飼料で育った家畜の肉、卵、乳製品にも表示義務はありません。

表示義務あり

意図せざる混入が5%を超える場合や、遺伝子組み換えと非組み換えの分別生産流通管理をしていない場合に表示義務があります。

表示例は「大豆(遺伝子組み換え)」または「遺伝子組み換え不分別」です。

任意表示(2023年4月厳格化)

「遺伝子組み換えでない」という表示は、これまでは混入が5%以下であれば可能でしたが、2023年4月以降、混入がないと認められる場合(検出限界以下、実質0%に近い状態)のみ表示できるようになりました。

新しい任意表示

以前「遺伝子組み換えでない」(5%以下混入)と表示されていたものは、「分別生産流通管理済み」や「遺伝子組み換え混入防止管理済み」といった、より複雑な表示に変わっています。

この表示制度の厳格化により、消費者が本当に遺伝子組み換えを含まない食品(0%)を選びやすくなった一方で、企業側がリスクを避けるために「遺伝子組み換えでない」という表示自体が減少する傾向にあります。

ゲノム編集技術について

近年、遺伝子組み換えとは異なる新しい技術として、ゲノム編集技術が開発され、注目されています。

技術の違い

遺伝子組み換えが外部から遺伝子を組み込むのに対し、ゲノム編集は、既存のDNA配列の特定の部分を狙って正確に改変する技術です。

特徴

従来の遺伝子組み換えよりも効率が数千倍も高く、予期せぬ変化が起こりにくいとされています。

自然界で起こりうる変化に近い変化を人工的に制御できる点が利点です。

日本での扱い

日本では2019年以降、特定の条件を満たせば、ゲノム編集食品は安全性の審査や表示義務なしに流通が認められています。

例として、GABA成分を多く含むトマトや、肉量が多くなったマダイなどが研究・開発されています。

消費者が取るべき行動

遺伝子組み換え食品に対して不安を持つ消費者は、以下の点を実践することが推奨されています。

表示を確認する

 「遺伝子組み換えでない」という表示(現在は混入ほぼ0%を意味する)を探す。

国産品を選ぶ

日本国内で商業栽培されている遺伝子組み換え作物は現在のところないため、国産原料(特に大豆、菜種、トウモロコシなど)を選ぶことで、遺伝子組み換え食品を避けることが可能です。

加工度の低い食品を選ぶ

加工油、清涼飲料水に含まれる加糖ブドウ糖液糖、インスタント食品、スナック菓子などは遺伝子組み換え原料由来の可能性が高いため、摂取を控える。

健康被害が証明されているリスクに注意する

遺伝子組み換え食品の危険性を気にしすぎるよりも、長期的な弊害が証明されている糖質過多やトランス脂肪酸の摂取などを避けることが重要であるという意見もあります。

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