国債について説明します。
国債とは何か、その目的
国債とは、政府がお金を借りるために発行する借金証書のことです。
企業がビジネスのためにお金を借りるのと同じように、政府は国債を発行してお金を借り、国家を運営します。
国債は借金であるため、もちろん利子を支払う必要があります。
国債をお金を貸した側、つまり国債の保有者は、政府から利子を受け取る権利があります。
本来、国の運営は国民から徴収する税金で賄うのが原則です。
しかし、毎年税金だけでは賄いきれない分が生じるため、その不足分を補うために国債が発行されます。
国債の発行と流通の仕組み
国債は、政府の機関である財務省が発行します。
財務省は、例えば「利率1%の10年債を1000億円発行します」といった条件を提示します。
この「10年債」とは、10年後に借金を全額返済するという意味です。
国債の基本単位は100円とされています。
政府が発行した国債は、まず銀行、信用金庫、証券会社などの民間金融機関に売られます。
これらの金融機関は、提示された条件に基づいて入札を行い、政府はより良い条件を提示した金融機関からお金を借ります。
国債の利子額は額面金額に基づいて計算されるため、入札額が低くても受け取る利子は変わりません。
そのため、金融機関はなるべく安い価格で国債を購入しようとしますが、安すぎると購入できない可能性もあるため、慎重に価格を決定します。
民間金融機関が国債を購入した後、次の段階として、日本銀行(日銀)がその国債を買い取ることがあります。
日銀が民間金融機関から国債を買い取ると、国債は日銀の保有となり、民間金融機関には日銀から現金(キャッシュ)が流入します。
この民間金融機関への現金の流入は、企業への貸し出しを積極的に促し、結果的に市場の金利が低下する傾向があります。
日本銀行と国債の関係
日本銀行は、一般的な民間銀行とは異なり、「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」という3つの重要な役割を担っています。
政府は民間銀行に口座を持たず、日銀にのみ口座を保有しています。
また、すべての銀行は日銀に「日銀当座預金」口座を持ち、銀行間の資金移動や政府の資金移動はすべて日銀を介して行われます。
日銀による国債の直接引き受けは原則として禁止されていますが、実際には、日銀が民間銀行に国債購入に相当する額を融資し、民間銀行がそのお金で国債を購入するという形が取られています。
国債の利子と償還
国債は借金であるため、政府は国債の保有者に対して利子(クーポン)を支払います。
しかし、日銀が国債を保有している場合、政府が日銀に支払う利子は、最終的に「日銀納付金」という形で政府に戻ってくるため、実質的な利払い負担は相殺されることになります。
国債には満期があり、満期が来た際には、政府は新しい国債を発行してお金を調達し、それまでの国債の返済に充てる「借り換え(ロールオーバー)」を行うことができます。
この借り換えのプロセスは国民には直接関係なく行われるため、借り換えを続ける限り、国民が金銭的な負担を感じることなく国債残高を維持することが可能です。
国債の償還方法には、税金を集めて返済する場合と、借り換えを行う場合があります。
しかし、税金を集めて国債を償還すると、国民の預金が消滅し、国民が貧困化するという見解が示されています。
これは、政府が財政赤字を拡大させると国民の資産が増加し、政府が財政黒字を目指して国債残高を減らすと国民の資産が減少するという「政府の赤字はみんなの黒字」というマクロ経済の原則に基づいています。
国債と経済への影響
信用創造と通貨発行
国債の発行は、銀行が融資によって預金を創造するのと同じように、政府による新しい通貨(預金)の創造を意味するという考え方があります。
政府が国債を発行し、その資金を支出として民間部門に回すと、民間部門の預金が増加し、国民の資産が拡大します。
資本主義経済の成長は、負債(借金)の拡大によってもたらされるため、特にデフレ期に民間企業が負債を拡大しない場合、政府が国債を発行して負債を拡大することが経済成長には不可欠とされます。
金利への影響
国債の金利は、市場の需給関係によって決まります。
国債への需要が増えれば価格が上昇し、金利は低下します。
日本国債の金利は、先進国の中でも最低レベルにあります。
また、政策金利(日銀が金融政策で操作する短期金利)と長期国債の金利は異なるものであり、政策金利の変動が直接的に国債金利に影響を与えるわけではないと指摘されています。
国債発行によって金利が急騰し、財政が破綻するという主張は誤りであるとされます。
国債は固定金利であるため、政策金利が上昇しても、既に流通している国債の利払いが直ちに増加するわけではありません。
金利の上昇は通常、景気向上の結果として起こるものであり、経済が弱い状況で無理に金利を上げることは、かえって経済に悪影響を及ぼす可能性があります。
インフレへの影響
国債の大量発行が市場の通貨量を増やし、通貨価値の低下、ひいてはインフレを引き起こすという見方があります。
アベノミクスの金融緩和も、このメカニズムを通じてインフレを起こそうとした政策であったと説明されています。
しかし、ハイパーインフレは、単に国債を刷りすぎたことによって起こるのではなく、供給能力の破壊や戦争など、供給と需要のバランスが極端に崩れた状況下で発生すると指摘されています。
日本の戦後のハイパーインフレも、供給能力の喪失が原因でした。
現在の日本では、輸入物価の高騰や国内の供給力不足による「コストプッシュ型インフレ」が進行しています。
このような状況下での国債発行による減税は、需要を喚起し、デフレ対策となり得ると考えられています。
また、政府支出を需要喚起だけでなく、生産能力を刺激するような投資(インフラ整備、公共事業など)に向ければ、インフレリスクを回避できる可能性もあります。
インフレを抑制するためには、供給能力を高めるための投資が不可欠です。
為替(円安)への影響
国債の大量発行によって市場に出回る円が増加すると、円の価値が低下し、円安につながるという考え方があります。
アベノミクスは、円安を誘導することを目的とした政策であったと説明されています。
しかし、日本よりもはるかに多くの国債を発行している米国や英国で円安ドル高が進んでいる現状は、国債発行が直接円安を引き起こすという単純な関係ではないことを示唆しています。
また、中央銀行は為替レートの変動に左右されて金融政策を決定すべきではないという意見も存在します。
「国の借金」論への反論と財政政策
「国の借金」という表現は誤解を招きやすく、「政府債務」と呼ぶべきであると指摘されています。
国債残高を国民一人あたりに換算して「1000万円の借金」といった表現は、国民が直接借金を背負っているかのような印象を与える巧妙なレトリックであるとされています。
政府は永久に存続する主体であるため、個人が借金をするのとは異なり、借金の返済期限や総額の限界が異なります。
借り換えを続けることで、永続的に国債を維持することが可能です。
また、日本政府は自国通貨である円建てで国債を発行しているため、通貨の増刷によって返済が可能であり、デフォルト(債務不履行)の可能性は低いとされます。
他国でデフォルトが発生したのは、自国通貨以外の通貨建てで借金をしていたためです。
税金は、政府の支出の「財源」ではないという考え方も提示されています。
税金の目的は、インフレ抑制、所得格差の是正、関税など多岐にわたります。
財務省が財政破綻の定義を曖昧にしているのは、日本が実際には破綻しないことが明らかになるのを避けるためではないかという指摘もあります。
積極財政の重要性
デフレ期においては、企業が投資を拡大しないため、政府が積極財政によって支出を増やすことが経済成長には不可欠であるとされます。
例えば、橋やダムの補強といった「予防保全」への財政支出は、将来の「事後保全」にかかる費用よりも安く済むため、長期的な視点で見れば財政健全化につながると考えられています。
政府の最も重要な役割は、民間の経済活動が健全に行われるためのマクロ経済環境(デフレの脱却やコストプッシュインフレの抑制など)を整備することであるとされます。
民間企業が利益を追求する支出は民間が行い、政府は民間が手を出さないインフラ整備、医療、教育、経済安全保障、国防といった国として必要な分野に投資すべきであるという考え方もあります。
日本国債の現状
保有者
日本国債の約9割は国内で保有されており、そのうち半分以上は日銀が保有しています。
円建て
日本が発行する国債は基本的にすべて円建てです。
格付け
かつてトリプルAだった日本国債の格付けは、現在シングルA+と評価が低下しています。
財務省は「日本国債はデフォルトしない」と公表していますが、格付け機関は格下げを行っています。
格付けの低下は、日本企業が海外で資金調達する際に不利になる可能性があります。
60年償還ルール
国債には「60年償還ルール」という制度がありますが、これは将来世代に負担を先送りしているという誤った印象を与えるために使われているという指摘もあります。
まとめ
国債は、政府が国家運営のために資金を調達する手段であり、特に税収だけでは賄いきれない部分を補うために発行されます。
日本政府が発行する国債は円建てであり、自国通貨を発行できるため、デフォルトの可能性は低いとされています。
日銀が国債を大量に保有し、利払いが実質的に政府に戻る仕組みがあることや、借り換えによって償還が可能であることから、「国の借金」論に対しては多くの反論が提示されています。
「政府の赤字はみんなの黒字」というマクロ経済の原則に基づき、政府の積極的な財政出動は国民の資産を増やし、経済成長を促す効果があると考えられています。
特にデフレやコストプッシュインフレのような経済状況では、国債発行による減税や公共投資などが有効な対策となり得ると指摘されています。


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