モデリングについて詳しくご説明します。
モデリングとは、心理学において、他者の行動を観察・模倣するだけでも学習が行われるという理論であり、また、人から人へ様々な要素が「感染」していく現象を指します。
モデリング理論の概要と歴史
提唱者と時代背景
モデリング理論は、1970年代にカナダ出身の心理学者でスタンフォード大学の教授であったアルバート・バンデューラによって確立されました。
社会学習理論
バンデューラは、学習は世界の中で行われるものとして、自身の理論を「社会的学習理論」と名付けました。
従来の行動主義との違い
従来の行動主義心理学では、学習は自分自身の直接的な体験によってのみ行われると考えられていましたが、モデリング理論は、本人が体験していないことでも、他者の行動を観察・模倣することによって学習が成立することを証明しました。
実証実験
社会的学習理論の実証実験として、子供の背丈ほどあるビニール製の起き上がり小法師「ボボ人形」を使ったボボ人形実験が行われました。
この実験では、攻撃的な大人の様子を観察した子どもたちは、後に攻撃的な行動(叩いたり蹴ったりする)を伴う遊びをする傾向が見られました。
これにより、観察を通じて大人の行動を学習することが証明されました
モデリングの主なメカニズム
モデリングには、「代理強化」や、学習が成立するまでの4つの過程があります。
代理強化(Vicarious Reinforcement)
代理強化とは、他者が特定の行動によって強化(賞罰)を受けている姿を観察するだけで、自身もその行動が代理的に強化される現象です。
例えば、犬をひどく怖がる少年が、同年代の子供が犬と楽しく戯れている画面を見ることで、少年の犬に対する行動が代理的に強化されるという心理療法への応用が可能です。
バンデューラによるモデリングの4つの過程
観察を通じて学習が成立するまでには、以下の4つの過程があります。
注意過程(Attention Process)
モデルとなる対象(親、兄弟、教師、著名人など)とそのモデルが持っている特徴を選択し、観察している過程です。
保持過程(Retention Process)
観察したモデルの言動を記憶に残している過程です。
記憶に残すために、頭の中でその対象の言動を繰り返し模倣(リハーサル)することもあります。
例えば、他人が火傷をしている様子を見て、「熱い」ということを記憶することです。
運動再生過程(Motor Reproduction Process)
記憶に残したモデルの言動を、自ら行動として再生(再現)する過程です。
自分が実現できている行動と、記憶の中にあるモデルの行動とのギャップを埋めるための調整が行われます。
動機づけ過程(Motivational Process)
模倣することで学習した行動を続けるための動機づけを行う過程です。
動機づけには、外部から受ける外発的動機(褒め言葉など)や、自分の内側から発生する内発的動機(達成感など)が存在します。
モデリングによる様々な効果
バンデューラは、社会的学習によってもたらされるいくつかの効果を挙げています。
観察学習効果
観察によって新しい行動レパートリーが習得される効果。
抑制・脱抑制効果
すでに習得していた行動の抑制(セルフコントロール)や、逸脱行動の抑制が外れる(脱抑制)効果。
反応促進効果
すでに習得していた行動が誘発され、実行しやすくなる効果。
環境注目効果
明確なモデルがない環境に対しても、自発的に反応するようになる効果。
覚醒効果
学習者の情動反応を喚起する効果。
モデリングと人生の変化
人生を変える方法は主に3つあると言われています。
時間配分を変える
努力を一つのことに注ぎ込む方法ですが、大人になってから行うのは難しく、時間がかかります。
住む場所を変える
場所が変われば常識や価値観が変わる方法ですが、仕事や家庭の事情から簡単には決断できず、非現実的です。
付き合う人を変える
この方法が最も簡単で効果が抜群であるとされています。
付き合う人を変えることが人生を変えることにつながる理由は、人の考え方、能力、性格などが、付き合っている人から「感染」するからです。
感染する要素
この「人から人へと感染する現象」を心理学ではモデリングと呼びます。
考え方、幸福度、人間性、目標、やる気、忍耐力、肥満度、収入、癖、言葉遣いなど、ありとあらゆるものが感染します。
具体例
自分の収入は、仲の良い友達5人の平均値になりがちです。
忍耐強い人を見ると、自分の忍耐力が2.5倍も違ってくるという研究結果があります。
友達が太り始めると、自分が太る確率が2.7倍にもなることが分かっています。
自分の性格は、付き合っている人たちの平均値とも言えます。
そのため、仕事で成功したいなら頑張っている人と付き合うなど、自分の目標に見合った人を選んで付き合うことで、意識せずとも望む方向へ変化することができます。
モデリングの応用と実践
モデリングは、幼少期に無意識に行っていた学習を、意図的に行うことで、なりたい自分に近づくための画期的な方法として活用できます。
すでに結果を出している人をモデリングすることで、失敗の過程をすっ飛ばし、飛躍的に成長することが可能です。
モデリングの5段階(実践的なアプローチ)
モデリングは、表面的な模倣から内面的な理解へと進む5つの段階に分けて行われることがあります。
第1ステップ(環境・外見)
理想とするモデルが身につけているもの(服装、髪型、時計など)を観察し、外見をコピーします。
ただし、これはあくまで見せかけ(表面)のコピーです。
第2ステップ(行動)
モデルの行動(身振り手振り、話し方、歩き方、表情、目線)を観察し、模倣します。
あなたが欲しい結果を持っている理由の全ては行動に表れています。
第3ステップ(能力)
モデルがどのような能力を発揮しているのか、どのようなペースで進めているのかを探求します。
状況判断力、意思決定の力、創造性、ユーモアなどがこのレベルに含まれ、自分とモデルの違いを理解することが重要です。
第4ステップ(信念・価値観)
なぜその行動をしているのか、その行動の裏側にある信念や価値観を知ることで、能力や行動の質が高まります。
困難な状況に陥ったとき、「モデルだったらどうするだろうか」と考え、解決に導くことができます。
第5ステップ(自己認識・使命)
その行為を通じて「自分は何者か」「何をしたいのか」という、世界に対する使命や役割を探求します。
この段階はモデルから卒業し(守破離)、自分で自分の信念や価値観を決定するレベルです。
モデリングの対象の選び方
モデリングする相手を間違えると、間違った方向に行ってしまう(ミスリード)ため、相手選びが重要です。
理想のモデルを選ぶ
すでに自分が得たい結果や、なりたい姿を持っている人を選びます。
複数の師匠
誰か一人だけのロールモデルでは不十分であることが多いため、師匠は複数いた方が良いとされます。
「近しい人」を選ぶ
自分と似た傾向や波動を持ち、かつ自分よりもステージの高い人(成功者)を見つけることが、成功のためのコツです。
ドリームキラーを避ける
「どうせ無理」「やめとけ」といった否定的な言葉が口癖の人(ドリームキラー)とは、臆病な気持ちが感染しないよう、距離を置くことが必須です。
モデリングは、自分自身が変わり、結果として自分の子どもや孫の人生にまで影響を及ぼすほど、大切な方法論です。


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