国の借金

政治と経済

日本の「国の借金」と呼ばれる公的債務については、その本質や経済への影響を正しく理解するために、いくつかの重要な視点があります。

国の借金

まず、「国の借金(国債)」は税収で返済されているものではなく、実際には「借り換え」によって継続されています。

これは日本に限ったことではなく、全世界で共通の仕組みです。

財務省などは「将来世代へのツケ」として税収で完結させるべきという認識を持っていますが、これは家計と政府を混同した誤解であると指摘されています。

個人は寿命があるため負債を返済し終える必要がありますが、政府には寿命がないため、負債を将来の黒字で完済しなければならないという家計のような制約は存在しません。

歴史的に見ると、日本の普通国債残高は1970年度と比較して約185倍にまで膨らんでいますが、これは政府が国債を発行して支出することで、国民に貨幣を供給してきた歴史そのものです。

政府が国債を発行して支出を行うと、その分だけ企業や家計の銀行預金が増えるという、資金供給の側面があります。

プライマリーバランス(PB)黒字化目標

現在、日本が掲げている「プライマリーバランス(PB)黒字化目標」は、経済成長を阻害する大きな要因になっているという指摘があります。

投資の抑制

PB黒字化という制約があるため、将来の成長を生むための投資(成長投資)までもが制限されてしまいます。

需要の不安定化

通常予算をPB目標のために絞る一方で、景気が悪化すると補正予算で対応するという不整合が続いています。

防衛力強化や国土強靭化といった長期的な投資も補正予算(単年度限り)で組まれることが多く、これでは企業が将来を見越した安定的な投資を行うことができません。

所得の低迷

企業と政府を合わせた「資金過剰(または不足)」の状態を見ると、政府が財政赤字を縮小させ、企業もお金を借りて投資をしない状況では、家計に所得が回らず、市中のマネーも増えない構造になっています。

また、グローバルな経済政策の潮流は、政府を小さくすれば民間が活性化するという「新自由主義」から、官民連携による積極的な成長投資の大競争時代へと変化しています。

アメリカなどの諸国は、日本以上に政府債務を増やして産業政策や安全保障に投資しており、日本だけが税収の範囲内でしか投資できない「プライマリーバランス」に固執し続ければ、国際競争に敗北し、発展途上国化してしまう恐れがあります。

直近のデータでは、物価上昇(インフレ)の影響で名目GDPが成長した結果、政府債務対GDP比率は勝手に下がってきています。

そもそも、デフレ脱却を優先すべき状況でPB黒字化を目指すと、景気が冷え込んでかえって債務比率が上がるという悪循環に陥っていました。

消費税は賃上げ妨害税

さらに、消費税についても議論があります。

消費税は「消費者が納税している税金」ではなく、法律上は「企業の付加価値(利益と給与の合計)」にかかる税金です。

そのため、消費税は実質的に「賃上げを妨害する税」として機能しており、社会保障の財源という説明も事実とは異なるとの見解があります。

結論として、「国の借金」の増大そのものを恐れるのではなく、その資金をいかにして将来の成長や安全保障、国民の所得向上につながる投資に回していくかという視点への転換が求められています。

最後に

政府の財政運営を、ある家族の家計に例えると分かりやすいかもしれません。

普通の家庭では、親が借金を残して死ぬと子供が困りますが、政府という存在は「決して死なない親」のようなものです。

この親は、借金を返すために生活を切り詰めて子供(国民)への仕送りを減らすよりも、新しい道具を買ったり、子供に教育を受けさせたりするために定期的にお金を調達し、家族全体の収入(GDP)を増やし続けることで、家全体を豊かに保つ役割を担っているのです。

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