残クレマイホーム

お金

「残クレマイホーム」(残価設定型住宅ローン)は、近年高騰する住宅価格への対策として、国(国土交通省)が2025年からの普及を本格的に後押ししようとしている新しい住宅ローンの仕組みです。

自動車の「残クレ」と同様の仕組みをマイホームに導入するもので、大きな注目を集めていますが、その内容は非常に複雑でリスクも伴います。

以下にその詳細を詳しく解説します。

残クレマイホームの基本的な仕組み

残クレマイホームとは、数十年後の住宅の価値(残価)をあらかじめ設定し、その分を差し引いた金額を分割で返済していく仕組みです。

具体的な例

6000万円の住宅を購入する場合、30年後の価値を2500万円(残価)と見積もったとします。

従来のローンでは6000万円全額を返済しますが、残クレでは2500万円分の元金の返済を後回しにし、残りの3500万円分だけを分割で支払います。

月々の負担軽減

返済すべき元金が少なくなるため、月々の支払額を大幅に抑えることができ、キャッシュフローが改善されます。

「利息」に隠された大きな注意点

月々の支払いが減る一方で、非常に重要な注意点があります。

それは、据え置いた「残価」の部分に対しても、利息はかかり続けるという点です。

元金は減らないが利息は払う

例えば2500万円を据え置いた場合、その2500万円に対する利息は完済まで(あるいは生きている間中)ずっと払い続ける必要があります。

総支払額の増加

通常のローンは返済が進むにつれて元金が減り利息も減りますが、残クレは残価部分の元金が減らないため、最終的に支払う利息の総額は通常のローンよりも高くなります。

シミュレーション例

6000万円を金利1%で借りた場合、通常の35年ローンより残クレ(残価2500万円設定)の方が、総支払利息が約270万円ほど多くなる可能性があるという試算もあります。

制度が導入される背景

なぜ今、このような制度が推進されているのでしょうか。

その最大の理由は、庶民の年収では到底買えないほど住宅価格が上昇しているからです。

価格の高騰

東京23区の新築マンション平均価格は1億円を突破し、全国平均でも年収の10倍を超えるなど、従来の35年ローンでは返済が困難な水準になっています。

国の狙い

返済期間を50年に延ばしたり、ペアローンを組んだりしても足りない状況に対し、国は「最初から完済を諦める(返済を先送りする)」という極端な解決策としてこの制度を普及させようとしています。

主なメリットと活用戦略

この制度をうまく使いこなせる人にとっては、資産形成の強力な武器になる可能性があります。

購入のハードルが下がる

本来なら手が届かない都心部や人気エリアの物件を購入できる可能性が出てきます。

住宅の質が確保される

残価を設定するためには、国が定める「長期優良住宅」などの高い性能や適切なメンテナンスが条件となる見込みであり、質の高い家に住むことができます。

出口戦略の柔軟性

物件を返却すれば残債が消える仕組みのため、最悪の事態での「逃げ道」があるとも言えます。

また、将来市場価格が設定残価を上回れば、売却して利益(キャピタルゲイン)を得ることも可能です。

重大なリスクと懸念事項

専門家からは、多くのデメリットやリスクも指摘されています。

「自分のもの」にならない

残価分を最後に一括で支払わない限り、家は完全には自分のものになりません。

最後は家を追い出されるか、多額の借金が残るリスクがあります。

資産価値の下落リスク

数十年後に土地の価値が暴落していた場合、設定した残価と実際の価値に差が生まれ、追加の支払いを求められる「残価割れ」のリスクが付きまといます。

団体信用生命保険(団信)の不明点

従来のローンは契約者が亡くなればローンが消えて家族に家が残りますが、残クレの場合、死亡時に売却・生産される可能性があり、家族に家を残せないかもしれません。

複雑な契約と制限

対象物件が限られたり、指定の金融機関しか使えなかったり、点検・修繕の義務が課されたりと、自由度が低い上にトータルで割高になる可能性が高いです。

結論

残クレマイホームは、「今この瞬間のゆとりを買うために、将来の負担と資産を先送りする」商品です。

住宅を「一生の財産」と考えるのではなく、インフレ状況下での資産運用ツールや、居住権の確保と割り切って使いこなす高度な判断が求められます。

制度の詳細はまだ検討段階の部分も多いため、今後の正式な発表を慎重に確認する必要があります。

例えるなら、この制度は「非常に高い通行料を払い続けて、豪華な特急列車に乗るようなもの」です。

目的地(老後)に着いたとき、その列車は自分のものにはならず、降りなければなりません。

その高い通行料(利息)を払ってでも今その列車に乗る価値があるのか、慎重に見極める必要があります。

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