『日本人のための大麻の教科書 「古くて新しい農作物」の再発見』は、大麻が現代の日本では「違法な薬物」というイメージが強い一方で、古くから日本人の生活に深く根ざした「農作物」であったことを多角的に解説する書籍です。
本書は、以下の10のキーワードを通して大麻の本質に迫ります。
名称
「大麻=違法な薬物」という誤解を解き、「麻」と「大麻」の言葉の整理を行い、人名や地名、ことわざにも使われる「麻」の言葉の多様性を示します。
歴史
日本人が稲作を始める遥か昔、約12,000年前から大麻を生活に用いてきた歴史を紐解きます。
租庸調や古事記、万葉集における大麻の記述や、国策として大麻栽培が推進されていた時代があったことを紹介します。
農
大麻農業の実態、特に栃木県における大麻農業の歴史と現状、そしてその存続の危機に触れます。
衣
かつて生活の一部であった大麻布づくりや、日本各地に残る大麻布の伝統、そして機能性自然素材としての大麻の可能性について解説します。
宗教
神道における大麻の重要性、神宮大麻、麁服(あらたえ)、横綱などに用いられる大麻、そして失われつつある国産大麻の現状、仏教における大麻の側面にも言及します。
文化
日本の生活文化や伝統文化における大麻の役割、日本各地に残された大麻関連の文化、世界遺産を支える素材としての大麻について考察します。
食
大麻の実など、食としての利用についても触れます。
薬
薬用としての側面に言及し、近年海外で進む医療用大麻の再評価や、日本におけるカンナビノイドの可能性について考察します。
模様
「麻の葉模様」が800年もの間、日本人の感性に訴え続けてきた理由を解き明かします。
法
なぜ、ほんの70年ほど前まで身近な存在であった大麻が「違法な薬物」とされてしまったのか、その法的背景を掘り下げます。
本書は、大麻に対する現代日本の偏見を払拭し、歴史的、文化的、産業的な側面から大麻を「古くて新しい農作物」として再評価することを目的としています。
宮台真司氏、亀石倫子氏、松本俊彦氏ら各界の識者からの特別寄稿も収録されており、多角的な視点から大麻を捉え直す一冊となっています。
戦後の大麻について
日本で大麻が現在のような厳しい規制対象となったのは、主に第二次世界大戦後のGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の指示が大きな転換点となりました。
それ以前の日本では、大麻は衣料、食料、医療、そして神道における神聖な植物として、非常に身近な農作物でした。
具体的には、以下の経緯が挙げられます。
戦前までの状況
戦前の日本では、大麻の栽培や使用を全面的に禁止する法律はなく、農家は自由に大麻を栽培していました。
一部、医療用として輸入されていた「印度大麻草」が麻薬に指定され、規制の対象とされていたものの、日本の在来種の大麻は一般の農作物として区別されていました。
GHQによる規制の導入(1948年「大麻取締法」制定)
終戦後、GHQは日本の大麻栽培を突然禁止するよう指示しました。その背景には、アメリカ国内で大麻(マリファナ)が「危険な薬物」として認識され、規制が強化されていく流れがあったことが指摘されています。
GHQの担当者からは、アフリカ系アメリカ人の兵士が大麻を好むためという理由が挙げられたとも言われています。
日本政府は当初、日本の麻農家や伝統文化への影響を懸念し、全面禁止を避けようとGHQと交渉しました。
結果として、免許制という形で、許可を受けた者のみが大麻を取り扱える「大麻取扱者免許制度」を設ける「大麻取締法」が1948年に制定されました。
これは、農家保護と薬物取締りの両側面を持つ、複雑な法律でした。
国際的な潮流との連動
1961年には国連で「麻薬に関する単一条約」が採択され、大麻はヘロインと同様に最も危険性の高い薬物として国際的に厳しく規制されることになりました。
日本もこの条約に加盟したことで、大麻規制はより強化される方向へ進みました。
「違法な薬物」としての認識の定着
高度経済成長期に入ると、化学繊維の普及などにより、大麻の需要は急速に減少しました。
また、海外で大麻の嗜好利用が問題視されるようになるにつれ、日本でも「マリファナ=違法な薬物」という側面が強調されるようになり、大麻は「ダメ。ゼッタイ。」な存在へと変わっていきました。
改正も行われ、当初は農家保護のための側面も強かった「大麻取締法」が、徐々に「違法な薬物を取り締まるための法律」という性格を強めていきました。
このように、大麻が日本で現在のような厳しい扱いになったのは、主に戦後のGHQによる指示、その後の国際的な薬物規制の潮流、そして国内での大麻の産業的需要の減少や「薬物」としてのイメージ定着が複合的に作用した結果と言えます。
近年の世界的な医療大麻の再評価や、日本の伝統文化における大麻の重要性が見直される中で、大麻規制のあり方も再び議論の対象となっています。


コメント