睡眠は髪の健康に深く関係しており、睡眠不足が続くと、髪の毛や抜け毛にとって良くない影響があるとされています。
不十分な睡眠は、ホルモンバランスの崩れや自律神経の乱れ、血流の悪化につながり、それが直接的に髪の成長に影響を及ぼします。
その結果、抜け毛や薄毛が進行しやすくなる可能性があります。
成長ホルモンとIGF-1の役割
髪の健康に深く関わっているのが、深い睡眠時に分泌される成長ホルモンです。
成長ホルモンの働き
成長ホルモンは、子どもにおいては身長を伸ばすイメージがありますが、大人にとっても細胞の修復や再生、代謝の促進、免疫の調整など、健康維持に欠かせない役割を果たしています。
特に髪の毛にとってはかなり重要であり、成長ホルモンの分泌が不足すると、抜け毛や薄毛が進行しやすくなります。
IGF-1の生成と髪への影響
成長ホルモンは肝臓で作用し、IGF-1(インスリン様成長因子)を生成させます。
このIGF-1は、毛乳頭細胞の中でも作られ、髪の成長をサポートします。
IGF-1が髪に与える影響は以下の通りです。
- 毛乳頭細胞を活性化し、毛母細胞を養う。
- 髪の成長を伸ばし、休止期を短縮する。
- 抜け毛を防ぎ、発毛を促す。
毛母細胞は毛の細部にある細胞で、髪の毛や体毛を作る元になる細胞です。
つまり、成長ホルモンがしっかり分泌されることでIGF-1の働きが高まり、髪の健康を守ることにつながります。
成長ホルモンが最も多く分泌されるタイミング
成長ホルモンは、かつて言われた「午後10時から午前2時」のゴールデンタイムといった時間帯そのものよりも、眠り始めの深い睡眠時に多く分泌されることが分かっています。
特に、入眠から最初の3時間に最も多く分泌されると言われており、この時間帯の睡眠の質が髪の健康にとって重要です。
睡眠不足が引き起こす薄毛のメカニズム
睡眠不足が髪の毛に悪い影響を与える代表的なメカニズムは、主に「頭皮の修復不足」と「自律神経の乱れによる血行不良」の2点です。
細胞の修復不足
日中、頭皮や髪の毛は紫外線、塵、埃、風、日常的な摩擦(頭をかく行為)などにより、知らず知らずのうちにダメージを受けています。
カラーやパーマをしている場合は、さらに強いダメージを頭皮は受けています。
これらのダメージは、寝ている間に修復されることで健康な頭皮状態が保たれます。
しかし、睡眠時間が十分に取れていないと修復が間に合わず、頭皮の回復が遅れ、髪の毛の成長率が下がってしまいます。
自律神経の乱れと血行不良
睡眠不足が続くと、自律神経の乱れが引き起こされます。
自律神経は、体をリラックスさせる副交感神経と、活動的・興奮している時に働く交感神経の2つが交互に入れ替わることで、体内のバランスや血液の流れを調整しています。
睡眠不足が続くと、リラックス時に優位になるべき副交感神経よりも、交感神経が優位になりやすくなります。
交感神経が優位な緊張状態が続くと、血管が収縮しやすくなり、血流の流れが悪くなります。
血流が悪くなると、髪の毛を作る毛乳頭細胞に、酸素や栄養が届きにくくなり、薄毛につながります。
特に頭皮の血管は細い毛細血管が張り巡らされているだけなので、血流が悪化すると深刻な栄養不足に陥りやすいです。
睡眠不足の人は、後頭部のあたりが赤くなりやすい(頭皮が鬱血している状態)ことが見られる場合があります。
また、睡眠不足によるエネルギー代謝の低下も影響します。
睡眠不足でダメージが溜まると、生命維持に重要な部分の回復にエネルギーが優先的に運ばれるため、頭皮や髪へのエネルギー供給が後回しになり、毛母細胞が十分に働けなくなる可能性があります。
理想的な睡眠時間とリズム
理想的な睡眠時間
1日の理想とされる睡眠時間は、大体7〜8時間です。
医学的には、最低でも6時間は確保することが推奨されています。
睡眠のリズム
睡眠時間だけでなく、睡眠の質と一定のリズムも非常に重要です。
体内には睡眠リズムや体内リズムが存在するため、毎日バラバラな時間に寝てしまうとリズムが作られず、入眠しづらい状態に陥ります。
また、体内ではメラトニンという眠気を誘発する物質が同じ時間帯に毎日出るため、寝る時間帯がバラバラだと、メラトニンがうまく出ずに、髪の毛の成長も妨げられることになります。
夜勤などで不規則になる場合でも、できる限り毎日一貫したサイクルで睡眠をとることが大切です。
また、最近の研究では、寝る時間が遅い人の方がAGA(男性型脱毛症)を発症しやすかったという報告もあり、夜型生活を送っている人はヘアサイクルが乱れ、薄毛につながる可能性が示唆されています。
睡眠とAGA(遺伝)の関係
薄毛の原因の多くはAGA(遺伝性)ですが、睡眠不足でAGAが発症することはないとされています。
しかし、睡眠不足は健康的な状態を維持しにくくし、ヘアサイクルを乱す可能性があるため、AGAではない人でも薄毛を進行させる原因になり得ます。
質の高い睡眠を得るための具体的な工夫
深い睡眠を得て成長ホルモンの分泌を最大化し、髪の健康を守るためには、生活習慣の見直しが推奨されます。
就寝前の光(ブルーライト)を避ける
寝る前のスマホやパソコンは控える(ブルーライトを避ける)。
就寝1~2時間前にはやめることが推奨されます(最低でも30分前)。
ブルーライトは交感神経を優位にし、脳を興奮状態にして睡眠を妨げます。
寝る時は部屋を暗くする。
メラトニンは部屋が暗くなることで活発に生成されるため、豆電球や外灯の光も遮断し、できれば真っ暗な空間で寝るのが理想です。
どうしてもスマホを見る必要がある場合は、ナイトモードやブルーライトカット設定にする、あるいは白黒表示(グレースケール)にすると刺激を軽減できます。
寝室の照明は、刺激が少なくリラックス効果が期待できる間接照明やオレンジ色の照明にすることも有効です。
食事・アルコール・カフェインの制限
寝る直前の食事やアルコールを摂らない
食事
就寝2時間前には食事を終えるのが理想です(胃腸に負担がかからない消化の良いものであれば、時間前にとっても大丈夫な場合もあります)。
消化活動が活発になると、脳や内臓が休めず、深い眠りが妨げられます。
アルコール
寝つきは早くなる気がしても、実際は眠りが浅くなり、睡眠の途中で起きやすくなります。
また、成長ホルモンの分泌を阻害します。
成人男性の場合、日本酒1合程度のアルコール代謝に3〜4時間かかるため、寝る4時間以上前に飲み終えることが推奨されます。
カフェイン
コーヒー、エナジードリンク、紅茶、緑茶、チョコレートなどに含まれます。
覚醒作用が体に抜けるまで約8時間かかるため、22時に寝たい人は14時(午後2時)以降は控えるのが理想です。
体温調整と入浴
就寝前の入浴やストレッチでリラックスする。
寝る1~2時間前に湯船に浸かって体を温め、入眠時に体温が下がるタイミングで眠気を誘うサイクルを作ります。
湯船の温度は、38度から40度くらいのぬるめに10~15分程度浸かるのがおすすめです。
熱すぎるお湯(42度以上)は交感神経を活発にし、体を興奮させてしまうため避けるべきです。
湯船に入る時間がない場合は、足湯でも同様のリラックス効果と血流改善効果が得られます。
規則正しい生活と朝の習慣
毎日同じ時間帯に寝起きする。
休日は平日とできる限り同じ時間に起きることが望ましいです。
朝起きたら必ず日の光を浴びる。
朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、脳が活動状態になります。
この時に分泌されるセロトニンが夜間に睡眠を誘導するメラトニンに変化するため、夜の睡眠の質を高める準備になります。
朝に15~20分程度の散歩やストレッチなどの適度な運動をすることも、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズにし、良質な睡眠につながります。
まとめ
良質な睡眠は、成長ホルモンの分泌を促し、頭皮のダメージを修復し、血流を改善することで、最強の育毛法となり得ます。
髪の健康のためには、7〜8時間の睡眠を確保し、特に初期の深い眠りを妨げない生活習慣を取り入れることが非常に重要です。


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