財政法第4条について詳しく解説します。
財政法第4条は、戦後の日本経済及び財政運営に大きな影響を与えてきた、極めて重要な規定です。
財政法第4条の条文とその原則
財政法第4条は、国債または借入金以外の歳入をもって、国の歳出の財源としなければならないという原則を定めています。
この規定により、国が支出を行う際には、原則として国債発行や借入による資金調達を禁止しています。
例外規定
ただし、以下の費用については、国会の議決を経た金額の範囲内で国債を発行し、または借入金をなすことができると例外的に認められています。
- 公共事業費
- 出資金
- 貸付金
この例外規定により発行が認められる国債は、通常「建設国債」と呼ばれます。
裏を返せば、この条文は建設国債以外の赤字国債の発行を原則として禁止していることになります。
このため、社会保障費(少子化対策、年金、医療、介護、生活保護など)といった政策的経費は、国税や社会保険料などの歳入で賄うべきだ、という考え方の根拠となっています。
制定された歴史的経緯と目的
財政法第4条は、第二次世界大戦の敗戦直後、日本の占領下(GHQの支配下)の時代に制定されました。
制定時期
昭和22年(1947年)3月31日に成立しています。
これは、同年5月3日の日本国憲法が施行される直前の出来事です。
GHQの意図
この法律の主たる目的は、日本が二度と戦争を繰り返さないようにするための「裏書き保証」を財政面から行うことでした。
戦前、日本は戦費調達のために戦時国債を無制限に発行していました。
GHQ(またはアメリカ)は、国債発行を禁止すれば、戦費調達が不可能になり、日本は本格的な軍事力を持てなくなると考えたのです。
当時の大蔵省主計局法規課長であった平井平二氏は、財政法の解説書の中で「本条はまた憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証せんとするもの」だと明確に記しています。
憲法第9条との関係
財政法第4条は、憲法第9条(戦争の放棄、戦力の不保持)とセットで、日本の財政自主権を制限し、国力を弱体化させるために作られたという指摘がされています。
当時の国内議論
制定当時の議論の中では、戦時国債の乱発とその後のハイパーインフレの反省から、健全財政を維持するために国債発行を制限したという説明がなされていました。
しかし、これは表向きの理由であり、実際には日本の軍事予算を組ませないという意図があったとされています。
特例公債法(赤字国債)による対応
財政法第4条は赤字国債の発行を原則禁止していますが、実際には、特にバブル崩壊以降、税収が大幅に減少したため、特例的な対応が取られてきました。
特例公債法
財政法第4条の原則を回避し、公共事業費以外の歳出(一般会計の財源)のために国債を発行できるようにするために、「財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律」(特例公債法)が毎年のように、または数年間の期限付きで制定されてきました。
法律の形骸化
特例公債法によって赤字国債の発行が繰り返されてきたことから、財政法第4条は「有名無実化」しているとも考えられています。
期限の問題
この特例公債法は現在、2025年度まで有効とされています。
この期限以降も赤字国債を発行し続けるためには、特例公債法を再延長するか、財政法第4条自体を改正する必要があります。
緊縮財政とプライマリーバランス(PB)との関係
財政法第4条は、日本の緊縮財政(財政健全化)の根拠の大元とされています。
PB規律の根源
政府が国債に頼らず、税収などの範囲内で歳出を行うという「プライマリーバランス(PB)の均衡または黒字化」という考え方は、財政法第4条から直接的に派生した概念です。
財務省のバイブル
財務省(旧大蔵省)は、財政法第4条を根拠とし、PB黒字化を目標とすることで、政府の支出を抑制し、増税を推進する政策スタンスを維持しています。
経済への影響
このPB黒字化目標や緊縮財政は、政府による必要な財政支出(公共事業以外の政策経費など)を妨げ、デフレ経済からの脱却を困難にし、日本の経済停滞の根本原因となっているという批判があります。
財政法第4条の改正・廃止の議論
財政法第4条は、日本の財政政策の自由度を奪い、経済を弱体化させている「戦後レジームの負の遺産」であるとして、その改正または廃止を求める声が強く上がっています。
必要性
財政法第4条を改正または廃止することで、政府は必要に応じて国債発行を行い、経済成長のための財政出動を柔軟に行えるようになり、また、特例公債法を毎年議論する必要がなくなります。
国会内の動き
自民党の積極財政を求める議員連盟は、財政法第4条が「戦勝国により課せられたもの」であると認識し、日本の財政運営を国際標準に是正するため、独自ルールの見直しを提言しています。
政治的な障壁
財政法第4条の廃止や改正は、財務省による強い抵抗に直面し、また、健全財政を重視する世論やマスコミの反発を招くため、政治的コストが非常に高いと認識されています。
財政法第4条は、単なる法律の条文ではなく、日本の戦後のあり方や、憲法第9条と密接に結びついた「見えない鎖」として、現代の日本の財政運営を根本的に縛り続けていると理解されています。


コメント