食料品の消費税をゼロにするという政策には、主にその実現方式と、特に飲食店などの特定の業種に与える悪影響、そして消費者が期待する物価引き下げ効果が限定的である点から、多くの問題点が指摘されています。
以下に、食料品消費税ゼロが抱える問題点を詳しく解説します。
制度設計の方式による事業者の倒産リスク
食料品の消費税をゼロにするには、主に「ゼロ税率課税方式」と「非課税方式」の2つの方法があり、税務上の扱いが大きく異なります。
非課税方式(事業者が大打撃を受ける方式)
非課税方式を採用した場合、事業者は売上にかかる消費税から仕入れや経費にかかる消費税を差し引く「仕入れ税額控除」を行うことができません。
利益の減少と倒産
食料品販売業者がこの非課税方式を採ると、仕入れなどで支払った消費税分が控除できず、事業者の利益が減少してしまいます。
中小企業の存続危機
利益が減る結果、中小企業やスーパーなどが「潰れまくる」可能性があり、この方式は「絶対にダメ」だとされています。
隠れた税負担
非課税売上を立てる業者がいると、仕入れ税額控除が使えない分を価格に転嫁せざるを得なくなり、最終的に消費者が「隠れた税負担」を負い、支払い総額が増えてしまう状況が発生します。
ゼロ税率課税方式(還付が可能だが飲食店に影響)
ゼロ税率課税方式の場合、事業者は仕入れ税額控除が可能であり、売上にかかる消費税がゼロであっても、仕入れにかかった消費税分の還付を受けることができます。
この方式であれば、事業者の利益は変わらないか、あるいは増える結果となる例もあります。
しかし、この方式を採用しても、特定の業種、特に飲食店に深刻な影響が出ます。
飲食店の増税と経営悪化の問題
食料品の消費税をゼロにしても、店内での飲食サービスは「食料品の販売」ではなく「サービス」として扱われるため、通常通り10%の消費税が課税されることが想定されています。
仕入れ税額控除の喪失
飲食店は、食材を仕入れる際に消費税を支払っています(現状8%)。
食料品が0%になると、この仕入れにかかる消費税がゼロ(または非課税)となるため、納税額を計算する際にこの食材費にかかる消費税を控除できなくなります。
実質的な増税
控除できる税額が減ることで、飲食店が税務署に納める消費税額が増加します。
これは、食料品消費税ゼロが飲食店にとって実質的な「増税」となることを意味します。
倒産続出の懸念
利益の薄い中小規模の飲食店は、この増税負担に耐えられず「倒産しまくり」の事態に陥る危険性が非常に高いと指摘されています。
物価引き下げ効果の限定性(消費者の幻想)
食料品消費税ゼロの議論は、「価格が8%下がる」という消費者の期待(幻想/ファンタジー)によって盛り上がりがちですが、実際にはその効果は限定的です。
需要と供給による価格決定
特に生鮮食料品(野菜、魚など)の価格は、消費税とは関係なく、天候や流通コスト、そして何よりも「需要と供給のバランス」によって大きく変動し、値段が決まっています。
8%の値下げはあり得ない
そのため、消費税率が8%から0%に変わったとしても、価格が綺麗に8%下がることは「絶対にない」と断言できます。
値下げ圧力と企業の苦境
もし企業が8%の値下げをしない場合、消費者のクレームや値下げ圧力に晒されます。
値下げを強要されれば、ただでさえ利益を削って消費税を納めている企業はさらに経営が悪化し、潰れていくことになります。
政策全体への悪影響
食料品消費税ゼロ政策は、より根本的な税制改革の実現を遠ざける可能性もあります。
消費税減税の機運の低下
食料品ゼロを実施しても、期待したほどの価格低下や経済効果が得られなかった場合、「なんや消費税率を下げても変わらないじゃないか」という結果になり、消費税の「廃止」や「一律5%減税」といった、より効果の大きい政策への機運がしぼんでしまう恐れがあります。
複数税率の固定化と制度の複雑化
食料品ゼロ(0%)、軽減税率の対象外(10%)、そして新聞など一部の軽減税率対象品目(8%)が併存することになり、税制が複雑化します。
また、複数税率の導入は、インボイス制度(適格請求書等保存方式)を不可避的に固定化させます。
公平性の問題
飲食サービス(10%)と持ち帰り(0%)で税率差が開きすぎることで、外食が不利になり、線引き問題(イートインとテイクアウトの区別など)がより深刻化します。
また、数あるサービス業の中で飲食業だけを優遇(または増税)することは、公平性を保てません。
大手企業への還付金増加
ゼロ税率が輸出免税と同様の仕組みで適用された場合、特に食品メーカーやスーパーマーケットなどが仕入れ税額控除によって、以前よりも多額の「食品還付金」を受け取り、利益を増やす可能性があります。
これは、飲食店の犠牲のもとに特定の業界が潤うという新たな「歪み」を生み出します。


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